商業施設新聞
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No.356

「働きやすさ」を考える


高橋 直也

2012/2/28

 先日、冬も折り返し地点を過ぎた時期ではあるが、冬用のスーツを買いに近所の某大手チェーン店に行った。男性用スーツ売り場へ向かうため、エスカレーターに乗っていると、店内で学生時代によく聞いた曲が流れているのに気づいた。
 すでに解散したアメリカの3ピースバンドの曲で、ギター(左利き)兼ボーカルがガラガラ声で歌うハードな曲だ。懐かしさを覚えながら、店内でサイフと相談しつつスーツを探していると、今度は最近のハードロックバンドの曲が流れてきた。スーツ店でハードな音楽は珍しい、と思いながらも耳を傾けていると、その後もハードロックやメタルばかりが流れているのである。客の立場としては、やや違和感があった。

 その店の内装や接客は決して雑なことはなく、むしろ接客は親切で丁寧だった。筆者の身長が168cmであるため、170cmサイズだと大きく、165cmサイズだと小さい。そのため、「小さめの170cmのスーツ」などを探してくれたりした。
 しかし、そんな親切な接客の間にも天井のスピーカーからは甲高い「Yeeaaahhhhh!」というシャウトが聞こえてきたり、ピロピロピロとギターの早弾きが聞こえたりするのである。

 なぜ、ここまでハードロック&メタルにこだわるのか。いくらなんでも「店でノリノリの音楽をかければ、来店客もノリノリになってスーツを買ってくれるに違いない」とは思わないだろうから、おそらく従業員の趣味なのだろう。
 この場合、“来店客の快適性”と“従業員の快適性”のどちらを優先するべきだろう。シャウトが響く店内に違和感を覚えるのは、決して筆者だけではなかったはずだ。しかし、ひょっとしたら全従業員が休日は革ジャンを来てハーレーダビッドソンに乗るようなメタル好きで、メタルをかけることが唯一最大のモチベーション向上法なのかもしれない……。

 まあ、それはさすがにないかもしれないが、従業員が働きやすい環境作りというのは非常に重要な要素であり、来店客が快適に感じる環境作りと同じくらい重視されるべきである。日本においては、“お客様が神様”なのは分かるが、やや働く側が軽視されているとも感じる。顧客に対してサービスを考え、提案するのは従業員であり、顧客の満足に直結するのは明白だ。
 これは商業施設に限った話ではなく、従業員が従業員のために環境を作るというのは、結果的に顧客への満足につながり、会社にきっちり還元されるのではないだろうか。従業員もWIN、顧客もWIN、会社もWIN。最高ではないか!
 つまり、端的に言えばこういうことだ。「俺も音楽聞きながら仕事したい!」
CDショップ(手前)だと好きな音楽をかけられるのだろうか(写真はアリオ松本)
CDショップ(手前)だと好きな音楽をかけられるのだろうか(写真はアリオ松本)

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