蛇の目ミシン工業(株)(東京都八王子市狭間町1463、Tel.042-661-3071)は、家庭用ミシンの世界的大手メーカー。また、産業用ロボットなどを扱う産業機器メーカーとしても豊富な実績を有し、ミシン製品に続く事業の柱として育てるべく取り組みを強化している。今回、取締役専務執行役員 産業機器営業本部 本部長の河島正司氏と産業機器営業部 部長の舌間聖一郎氏に話を聞いた。
―― ロボット製品の需要動向について。
河島 当社の産業機器事業は、卓上型ロボットを主力に電機・電子分野を中心に展開しており、塗布、はんだ、ねじ締め、基板分割などで主に使用されている。2016年度(17年3月期)については、スマートフォン関連の投資拡大を受け、中国を中心とした海外向けが伸長。結果、16年度のロボット出荷台数は当社にとって過去2番目の高水準となった。
―― 製品面では。
舌間 卓上ロボット「JR3000シリーズ」に基板分割ロボットを追加ラインアップし、4月から販売を開始した。当社の強みである高速性や剛性、精度などを向上させ、さらにルーターカット方式の採用により、基板へのストレスを低減しながら綺麗な切断面を実現できることが特徴だ。また、IoTやインダストリー4.0といった生産の高度化を見据え、通信機能の強化も図った。
―― そのほか機能面での特徴は。
舌間 当社の主力である電機・電子分野ではデバイスの小型化や微細化が進んでおり、それに伴いティーチングの難易度も上がっている。そこでUSBカメラを使って、PC上の拡大映像からポイントを指定し、アイコンを選ぶだけでティーチングができる機能を設けた。また、カメラ搭載塗布用ロボットをラインアップし、煩雑だったカメラ、センサーによる補正機能に対して、カメラのキャリブレーションやセンサーの設定、ティーチングなどを1つのPCソフトで簡単に行えるようにしている。
―― 販売ならびに生産体制は。
河島 国内営業所(名古屋、大阪)に加え、海外では米国、ドイツ、中国・上海、台湾に販売子会社を設置しており、需要の増加を受けて海外拠点では人員を増やしてサポート体制を拡充している。ロボット製品の生産については、本社敷地内の東京工場(一部ジャノメ台湾)で製造する体制をとっている。近年は需要増によって供給がタイトになる期間も出てきているが、ミシンの生産部隊などグループ内のリソースを活用することで現状では対応できている。
―― 今後の拡販に向けては。
河島 海外の強化は重要なテーマとなり、先に述べた海外拠点での人員強化を継続的に実施していく。また、当社はメキシコやブラジルに卓上型ロボットやサーボプレスのショールームを有しており、今後は展示製品を積極的に増やすことで、こういった地域での認知度向上にも努めていきたい。将来的にはベトナムやインド、メキシコなども重要な市場になっていくと思われ、ロボットの市場はグローバルでさらに拡大していくだろう。
―― 17年度の見通しを。
河島 17年度も現在のところ16年度の勢いを継続するかたちで堅調に推移している。主力市場の電機・電子分野は需要変動が激しい業界であり見通しづらいが、先に述べたような海外での体制強化に加え、個別ユーザー対応の強化、IoTの時代を見据えた通信機能の訴求などを通して、さらなる拡販につなげていきたい。そして17年度は過去最高の出荷台数を目指していきたいと考えている。
(聞き手・浮島哲志記者)
(本紙2017年5月18日号8面 掲載)