商業施設新聞
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No.353

進む少数派


松本 顕介

2012/2/7

 そのデータに軽い衝撃を覚えた。厚生労働省が発表した「たばこ・飲酒・睡眠に関する状況」である。
 それによると、現在習慣的に喫煙している者の割合は2010(平成22)年で32.2%と、前年より6ポイントも低下しているのだ。しかも、男性は前年の23.4%から19.5%とついに20%を割り込んだ。喫煙者の身として、“少数派”の進展は肌で感じていたのだが……。

 世の中は、社会のニーズに呼応していくもので、喫煙できる場所が街の中から消えていく。すでに、駅構内が禁煙になって久しく、コンビニの店頭や、しゃれたカフェなど、街中から消えていった喫煙スペースは枚挙に暇がない。
 多世代層の来場を見込む郊外型ショッピングセンターは、喫煙者にも優しく、喫煙スペースを設けている施設が多い。よく目にするのは、トイレのそばにガラス箱で覆われた喫煙ボックス。そこで紫煙をくゆらせていると、たまらず駆け込んで来る老若男女の同士たち。なかには、子供をボックスの外で待たせている若いママも……。
 蛇足だが、この喫煙ボックスに縁のない方に申し上げるならば、この中で少数派同士が話を弾ませることはない。どこか、後ろめたさがあるからなのか。

 喫煙者の減少とともに、いずれは有料化、またはこのボックス自体も減ってしまい、施設運営者が「いっそのこと、このスペースをテナントに貸してしまおう」とか考えているのではという懸念がいつもある。
 だが、個人的には“居場所がない”などと決して怒りの狼煙を上げることはないだろう。喫煙の機会が減れば、おサイフにも優しいし、健康にも良い。家族から「タバコ臭い」と非難を浴びることも減ると割り切ることだろう。
 こんな世の中にあって、ざっとみたところ喫煙スペースが4分の3を占めるコーヒーチェーンもある。弊社に近いカフェベローチェである。時代に逆行しているというより、ニッチなニーズを取り込んでいると言えるのかもしれない。しかし、そんなマイノリティのための店も、いつ時代の荒波に飲み込まれるのか。
現在習慣的に喫煙している者の割合の年次推移
喫煙場所の集約は街の風景になった。厳冬のこの冬、屋外での喫煙はツライ
喫煙場所の集約は街の風景になった。
厳冬のこの冬、屋外での喫煙はツライ

 たばこは、ニオイや汚れが壁や空調機などにこびりつき、清掃コストを考えると……。フランスなどでは、テイクアウトとイートインでは料金が異なることが多いが、喫煙席は「コーヒー+20円」とか、席チャージが発生するかもしれない。その時こそ、禁煙するかもしれない。と思いつつも、一昨年のたばこが値上がりした時も同じ思いを抱くも、未だに紫煙をくゆらす日々が続く。
 なお、たばこをやめたいと思っている人は、男性で43.6%と前年より2ポイント上昇した。小生もここに属する。いつ多数派になれるのか。値上げに文句を言いつつも、いつまでもこちら側に居座る。あちら側へ行く道すじは見えるのか。

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