電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第218回

(株)メガチップス 代表取締役社長 髙田明氏


ファブレスの世界10位以内目標
IoT向けASSP、MEMSも拡充

2017/4/21

(株)メガチップス 代表取締役社長 髙田明氏
 (株)メガチップス(大阪市淀川区宮原1-1-1、Tel.06-6399-2884)は、国内初のファブレス半導体ベンチャー企業として創業し、順調に業績を伸ばしている。2017年3月期の売り上げは、当初予想の600億円を上回り640億円まで躍進する。16年3月期の557億円に対し、約80億円を上乗せしたことになる。得意とするASIC分野に加え、IoT分野のASSP、さらにはMEMSタイミングデバイスなどの新規分野が伸びてきている。同社を率いる代表取締役社長の髙田明氏に話を伺った。

―― 神戸のご出身です。
 髙田 神戸生まれの神戸っ子、大阪大学工学部で電子工学を学んだ。リコー半導体の池田工場が立ち上がった1981年に入社し、ここで進藤晶弘氏(メガチップスの創業者)に出会うことになった。

―― メガチップスの創業期からおられますね。
 髙田 創業当初は受託開発から始めた。設計の腕とビジネスの知恵で勝負するとの思いで頑張った。大容量マスクROMを低コストで作る技術を認められ、大手ゲーム機メーカー新製品の主要部品として採用されることとなった。たった30人の無名のファブレス企業と台湾のベンチャー企業連合に決められた社長の眼力は、相当なものがあったと思う。

―― 現在の柱は。
 髙田 ゲーム機器、デジタルカメラ、事務機、通信機器向けのASIC事業がコアとなっている。一方、海外の顧客を対象としたASSP製品の拡充などを通じてグローバル事業の拡大を加速している。海外売上高構成比は12年3月期でわずか0.2%しかなかったが、これが16年3月期には45.8%まで拡大している。モバイル、ウエアラブル機器を含むIoT分野に拡大しており、今後は独自のIP、アナログ技術を強みにFA、ロボティクス、車載などの産業機器分野における事業展開を充実させていく考えだ。

―― MEMSタイミングデバイスも期待できます。
 髙田 14年11月に、この分野でマーケットシェア80%以上を獲得していた米SiTimeを2億ドルで買収した。極めて順調に成長しており、売り上げを買収後わずか2年で3.5倍に伸ばした。出荷個数は、16年にワールドワイドで2億5000万個を出荷し、17年は4億個超まで拡大するだろう。ウエアラブルに向けたMEMSタイミングデバイスでは、ほぼオンリーワンとなっている。超小型で振動や温度変化にも強く高精度なため、今後通信機器、ルーター、スイッチャー、基地局、車載などにも搭載が進む。IoT向けのキラーデバイスにもなるだろう。

―― DisplayPortデバイスも拡大していますね。
 髙田 これは今後加速する大容量の映像や音声のデータを機器から機器へ、また機器内で転送するために用いられる映像ディスプレーの入出力インタフェースの規格に対応するデバイスである。またDisplayPort規格は今後標準的なインターフェースとなり、爆発的な普及が見込まれるUSB Type-Cの高速データ転送規格として唯一採用されており、大きな成長が期待できる。当社はDisplayPort規格を制定するVESAの議長を擁し、リーディングカンパニーとして、この規格の普及に努めていく。

―― 組織運営で気を付けていることは。
 髙田 M&Aで大きくなってきただけに、組織の壁を取り払い、横のつながりを重視している。グローバル企業として成長するために多様な文化をお互い尊重しつつ、創業から培った企業文化の共有を大切にしている。社員の意識改革が重要だ。失敗を恐れて動かないことこそがリスクであると思っている。また、女性社員、海外社員、中高年社員の知恵と視点を活かし活性化することを積極的に考えている。

―― 中長期目標は。
 髙田 企業にとって成長は活力であり、常にチャレンジを続けたい。ただし、いたずらな売り上げ拡大よりも利益を優先する。LSIとシステムの知恵の融合を図っていくことが当社の企業コンセプトであり、これは変わらない。著名な半導体ファブレス企業はほぼ米国勢だ。いつの日にか日本発の企業として初のファブレス世界ランキングトップ10に食い込みたいと真剣に思っている。

(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
(本紙2017年4月20日号1面 掲載)

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