KUKA Roboter(ドイツ・アウクスブルク、日本法人=横浜市保土ヶ谷区神戸町134、Tel.045-744-7531)は、世界トップクラスの産業用ロボットメーカーとして知られ、ドイツ発の製造業高度化プロジェクトである「インダストリー4.0」においても中核的な役割を担う企業だ。今回、同社の日本法人であるKUKAロボティクスジャパン(株)の代表取締役社長の星野泰宏氏に話を伺った。
―― 2016年のロボット製品の需要動向から。
星野 出荷台数ベースでみると、16年におけるKUKAグループのロボット製品は前年を上回った。市場が拡大している中国をはじめとしたアジア、ドイツを中心とした欧州などグローバルで堅調に推移した。こういった状況を受け、ドイツと中国・上海の生産拠点はフル稼働の状態が続いており、対応策として中国で増強計画が進んでいる。
―― 16年は美的集団からの買収提案もありました。
星野 中国の大手家電メーカーである美的集団(ミデアグループ)からの買収提案があり、KUKAグループとしてそれを受け入れた。正式な契約の締結はおそらく3月ごろになるであろう。ただ、本件による大きな体制の変化はなく、契約にも23年まで現状の雇用や生産体制を維持する内容が記されており、これまでと同じ体制で独立した事業運営を続けていく。
一方でKUKAグループとしては、美的のネットワークを活用して中国市場での拡大を進めていくことになる。加えて、美的の資金力を活かし研究開発のスピードも加速させていく。現在、本社のあるドイツのほか、米国、中国、ハンガリーに研究開発拠点を有するが、開発面での人員や拠点の数は増えていくことになるだろう。
―― その研究開発面での方針は。
星野 インダストリー4.0に関連した次世代システムが中心となり、その1つとして当社が開発したシステムソフトウエア「mxAutomation」の取り組みがある。ロボットとコントローラーを簡単につなげることができるソフトで、他社製のコントローラーであってもmxAutomationを搭載することで当社のロボットと連携でき、工場内のM2Mネットワークも容易に構築できる。当社ではこのmxAutomationを共通言語にしたクラウドならびにエッジサーバーシステムの開発も進めており、ベースはほぼ完成している。今後、システムの完成度を上げていき、17年内に「KUKAコネクト」として市場に本格投入していく予定だ。世界各地で稼働するロボットの状況やメンテナンス時期の通知、ログの確認などをいつでも好きな場所から見ることができる。
―― 電機・電子向けの取り組みについて。
星野 16年に「KR3 AGILUS」を市場投入した。電機・電子分野でニーズの高い3kg可搬の多軸ロボットで、このクラスのロボットとしては業界トップの精度とスピードを誇る。また、人協調型ロボットも重要な製品だ。当社では09年に製品を市場投入するなど、この分野にいち早く取り組んでおり、現在は人協調型の7軸多関節ロボット「LBR iiwa」を展開している。人協調型ロボットから当社の強みを知っていただき、そのほかの製品についても導入を検討していただくケースも出てきている。
加えて、人協調型ロボットと自律移動型の搬送台車を組み合わせた「KMR iiwa」を開発しており、17年10~12月から本格的に展開を始める。搬送台車という「足」を持つことで、生産ライン内を移動し複数の役割を1台でこなすことができる。当社ではロボットだけでなく搬送台車も自社で開発しており、1台のコントローラーで両方を制御できる。また、プログラミングも世界中で一般的に使われている「JAVA」でティーチングできる。
―― ロボットの活用範囲が広がりそうですね。
星野 そのとおりだ。その一方で今後、ロボットの導入に際し、エンジニアリングの要素以上にソフトウエアの重要度が高まっていく。そのため、ソフトウエアハウスやモバイル関連企業など従来ロボット業界とあまり接点がなかった企業にも大きなビジネスチャンスが生まれるだろう。当社としてはこういった企業の方とも連携していきたいと考えており、もしご興味がある方がいればぜひお声がけいただければと思う。
―― 17年における日本市場での方針を。
星野 電機・電子分野でビジネス展開をより強化していく考えだ。人協調型ロボットの提案を強化するとともに、17年後半からは「KMR iiwa」も商品群に加え、ソリューションの提案力を高めていく。またロボット単体ではなく、当社でシステムをパッケージ化した製品の提案も強化していく。例えば、先に述べた「KR3 AGILUS」には、外径寸法1mmの微細なねじをピッキングして自動でねじ締めまで行い、ねじの状況をモニタリングして工程データをフィードバックするといったソリューションなどもすでに取り揃えている。こういったソリューションを拡充し、ロボットを導入しやすくすることで、電機・電子分野の方の生産の高度化に貢献していければと思う。
(聞き手・浮島哲志記者)
(本紙2017年2月9日号9面 掲載)