VR(ヴァーチャル リアリティ)元年と言われた2016年には多くのVR関連ゲーム施設が開発され、お披露目に参加させてもらった。アドアーズはVRエンターテインメント施設「VR PARK TOKYO」、セガグループは東京ジョイポリスで6人同時プレイのアトラクション、ナムコはVR施設「VR ZONE」を開発した。
セガグループが16年7月に導入した「ZERO LATENCY VR(ゼロレイテンシー ヴィーアール)」は、私にとって初めてのVRゲーム体験だった。慣れていなかったためか、ゲームを終えた後も3次元空間をさまよっているようなふらふらした感覚で、目の前にきらきらと白い光が一日中ちらついていた記憶がある。それによって免疫ができたのか、12月にお披露目されたアドアーズのエンターテインメント施設では、2時間で6ゲームを楽しんだが後遺症はなかった。ただし、仮想現実に没入して脳が疲れたのか、頭の中の疲労感覚は残ったが。
アドアーズのVR PARK TOKYOは、JR渋谷駅から徒歩5分の好立地で、7機種/8台(開店時は6機種/7台)のVRアトラクションを施設内に設置した。中でも、「DIVE HARD(ダイブ ハード)VR」の恐怖感は仮想現実の名にふさわしいものだった。足がすくむ超高層ビルの上で、攻撃してくる敵の飛行物体を銃で迎撃する内容。ビルの上から下に落ちるのではないかという恐怖感と臨場感は現実と同じで、まさしくVRの真骨頂なのだろうと実感した。下を見ると実際に足がすくんでしまい、男でも「ひえー、落ちたくないー」と悲鳴を上げてしまうほど迫力満点の演出。ゴーグルやヘッドホンを外すと、普通の平らな床と鉄板の上なので、「なんだ、やはりただの床の上だったか」と安心してほっとしてしまう。
また「SOLOMON's CARPET(ソロモンズ カーペット) VR」は、魔法の絨毯に乗り、冒険するアトラクション。空飛ぶ絨毯の上で、体のバランスを取りながら襲い掛かってくるモンスターと戦闘するゲームで、仮想現実の中でプレイヤーが乗っている台も上下に微動し、立体的に後方へ飛んでいく上空の風景の中で、本当に絨毯に乗って飛んでいる錯覚に陥る。
バッターボックスに立つと目の前に
広大な野球場が広がる
さらに「対戦 ハチャメチャスタジアム VR」は、野球のバッターの立ち位置でゲームに参加するもので、ピッチャーによる投球がこれまた迫力がある。スライダーの球種は本物と見間違えるほど本格的で打てない。この野球ゲームはグリー社と共同開発したものだ。
このほかにも「協力 GHOST ATTACKERS VR」、「CIRCLE Of SAVIORS BEGINNERS」「バンジージャンプ VR(仮称)」、「体感 ホラーVR Creeping Terror」がある。
料金は、70分遊び放題で3300円(2人以上の際は1人当たり2900円)、30分未満の場合は1500円。16年7月に設置されたセガグループ第1弾ソフトのシューティングゲーム「ゾンビサバイバル」も料金が1800円だったので、通常のゲームと比べると高級な値段である。しかも、電子メールなどによる予約制である。
アドアーズの上原聖司社長によると、東京・渋谷での今回の投資額は2ケタ億円にのぼり、投資回収は簡単ではないという。そのため、VRゲームシステムを他社に供与したり、関連グッズを販売して副収入で稼いだ相乗効果によって投資回収を早める考えである。
これまで体験したVRゲームは、向かってくる敵を打ち倒す戦闘型が多かった。ミサイルや銃で敵を攻撃して点数を稼ぎ、逆に攻撃を受けると失点するという単純なもので、それぞれ背景画像や風景は異なるとはいえ、どうも画一的な側面が否めなかった。その点で今回の野球やバンジージャンプのゲームは新鮮だ。17年のVRエンターテインメントは、そのような体験型、あるいはコト消費型の開発に期待したい。ゲーム産業だけでなく旅行業界が取り入れても楽しいのではないだろうか。めったに行けない場所を訪れたり、宇宙旅行など、まさしく未知との遭遇を体感できるのではないかとわくわくする。さらにコンサート会場の仮想現実などはどうだろうかと、想像は尽きない。VR2年目はどんな作品が飛び出すのか楽しみである。