商業施設新聞
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No.342

ルミネで逢いましょう


松本 顕介

2011/11/15

 1970年代半ばの師走。父親に連れられて「ゴジラ」「モスラ」「ラドン」の東宝怪獣映画3本立てを日劇に観に行った。師走のイベントということも手伝って、建物の外観も含め、その時のことは強く印象に残っている。それから数年後、そこは有楽町センタービル、通称「有楽町マリオン」に大きく様変わりした。

 当時の十代にとって、有楽町マリオンから受ける印象は「大人のステイタス」。高級ラウンジを彷彿させる、洗練されたロビーを擁するワンランク上の映画館と、その両脇を阪急、西武の百貨店が固め、「阪急」「西武」のサインは威厳すら放っていた。いつか自分も時計の下で待ち合わせして、映画を観て、その後は館内をぶらぶらしたいと、そんな場面を想像したくらいだ。
 思い描いていた憧れは、徐々に実現していく。待ち合わせもしたし、映画も相当観た。話題の映画は「MY ハレの日」と位置づけ、ここで観たものだ。

 だが、いつの頃からか足が遠のいた。
 自分の生活圏にショッピングセンターが増えたし、シネコンもたくさんできたからだろうか。同時に、日常生活の動線も変わった。すると、意識の中から消えていく。必要な場所のリストから徐々に外れていった。

 それから一気に時代は進み、2010年代に入ろうかという頃、西武有楽町店が閉店するというニュースが飛び込んで来た。後継テナントにはヤマダ電機の名も挙がった。その頃、ヤマダ電機は池袋や新宿などに都市型大型店舗「LABI」を破竹の勢いで出店しており、「次は有楽町に築城か」と思った。もしもそれが実現していたら、そのごちゃ混ぜ感がアジアぽかったかも知れない。よくも悪くも、街はまったく別の顔になっていただろう。だが、そのヤマダ電機は今、郊外の小型店に出店の軸足を移している。
 その後、色々な企業の名前が出ては消えたが、10年秋にテナントがルミネに決まった。年末には西武有楽町店が幕を閉じ、自分の80~90年代が終わるのか、と若干の郷愁が去来しつつも、新しい時代への期待も高まった。

 そして、今年10月28日のルミネ開業が迫るにつれ、徐々にその全貌が明らかになっていく。そのひとつが、キャッチフレーズの「Otona?」。自分にとって有楽町は、十分大人の街であった。現在のイトシアができる前、呑み屋街が広がっていた風景も、多少カテゴリーは異なるが大人。ルミネの謳う“オトナ”とは……と思いを巡らす。
 そうこうしているうちに、あっという間に開業当日を迎えた。開店前に行ってみると、たくさんの人が並んでいた。今のオトナが。ルミネの発表によると、実に5000人が開店を待ち侘び列をなしていたという。中には、「おとうさん、場所を間違えていますよ。おそらくここではなくて駅を出たところですよ」とお節介を焼きたくなるオトナの姿もあったほど。
 ルミネ有楽町店は、開業3日間で20万人が訪れた。今もなお、店内は混んでいる。きっと、施設の前で待ち合わせも増えるだろう。2010年代の「有楽町で逢いましょう」のアレンジはどんなものなのか、興味深い。
ルミネ有楽町店のオープンニングセレモニー。新しい時代がスタートした
ルミネ有楽町店のオープンニングセレモニー。新しい時代がスタートした
3日間で20万人がルミネ有楽町店を訪れた(写真右側)
3日間で20万人がルミネ有楽町店を訪れた(写真右側)

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