商業施設新聞
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No.341

庁舎のあるべき姿


岡田 光

2011/11/8

 「ちょっと取材に来ていただけませんか?」。そんな本紙読者からの誘いを受けて、10月中旬に広島県三原市を訪れた。思えば小学5年生の秋以来、ご無沙汰していたJR三原駅であるが、電車を降りた途端、駅前に広がる風景を見て唖然とした。天満屋が三原店を閉店したのは以前から聞いていたが、その跡地に広がるのは、敷地の半分にも満たない芝生と、木製のベンチが3つ。残りの敷地はコンクリートで整地されていた。この光景を見て、ショックどころか怒りすら覚えたが、のちに三原市役所で同跡地について取材すると、行政と民間のまちづくりに対する価値観の違いを痛切に感じた。

 写真は三原市役所の現在の様子である。同市は中心市街地の活性化を図る一環として、この庁舎の移転を計画。その移転先として白羽の矢が立ったのが、前述の天満屋三原店がテナントとして入居していた「ペアシティ三原東館」の跡地である。ペアシティ三原は、1981年に三原市が施行者となり、再開発事業で建設されたショッピングモールで、竣工当時は西館と東館で構成されていた。西館は1階にスーパーマーケットや公共施設がテナントとして入居し、三原国際ホテルも併設。一方、東館は百貨店の天満屋が核テナントとして入居し、延べ床面積の8割程度を占めていた。
 しかしながら、天満屋が2006年3月に撤退を決めたため、その前年に東京の不動産会社「ライフコート」が土地および建物を買い取り、既存の建物を取り壊して、商業棟と住宅棟の建設を計画した。解体工事までは順調に事が運んだものの、08年のリーマン・ショックにより、ライフコートの資金がショートし、同社は破産手続きに追い込まれた。こうして、JR三原駅前に5970m²という“空き地”が生まれてしまったのである。
移転が計画されている「三原市役所」
移転が計画されている「三原市役所」

 市は11年6月、ゼネコン4社を対象に、ペアシティ三原東館跡地の具体的計画案を募集し、その内容を公表した。詳細は本紙で紹介するが、注目すべきは商業店舗と新庁舎のバランスだ。商業店舗のスペースは低層部、それも1階部分もしくは1~2階部分と非常に少ない。これに対し、新庁舎のスペースは高層部で5層、もしくは6層と広い面積を確保している。確かに、現在の三原市は05年3月に1市3町(旧三原市、本郷町、久井町、大和町)が合併したもので、職員数も1000人を超えているが、中心市街地の活性化に庁舎が役立つとは到底思えない。現に、隣接する「ペアシティ三原西館」には市の教育委員会などがテナントとして入居しているが、建物内は閑古鳥が鳴いている状態だ。

 市担当者の見解としては「一刻も早く新庁舎の移転を正式決定し、中心市街地(駅前)の空洞化に歯止めをかけたい」という。一方、地元住民は「現庁舎を移転する必要はないと思う。建物は十分な耐震性を確保しているし、老朽化もほとんど目立たない」と反論している。両者の議論は平行線を辿ってきたが、まもなく結論が出る見通しだ。
 いずれにしても、以前の活気溢れる“街”の風景を取り戻すことが、三原市役所に課せられた使命だと思う。

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