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第202回

積水化学工業(株) 高機能プラスチックスカンパニー デバイス材料事業部 開発担当部長(兼)エレクトロニクス営業部 分野戦略 部長 長野基氏


スマホ向けはハイエンドに特化
遮光技術など独自技術を開発

2016/12/22

積水化学工業(株) 高機能プラスチックスカンパニー デバイス材料事業部 開発担当部長(兼)エレクトロニクス営業部 分野戦略 部長 長野基氏
 積水化学工業(株)(東京都港区虎ノ門2-3-17、Tel.03-5521-0521)は、モバイル向けの機能性材料やフィルム、テープ製品のハイエンド化に注力している。高機能プラスチックスカンパニーは、エレクトロニクスと車輌・輸送、住インフラ材、ライフサイエンスの4つに事業を区分しており、FPDやスマートフォン(スマホ)向け材料はエレクトロニクス分野で開発を進めている。2016年度上期(4~9月)の業績は、売上高が250億円となっている。デバイス材料事業部 開発担当部長兼エレクトロニクス営業部 分野戦略部長の長野基氏に話を伺った。

―― 製品展開について。
 長野 モバイル向け製品は、機能フォームテープや遮光PETテープ、極薄発泡シート、導電テープなどを提供している。
 機能フォームテープは、極薄ポリエチレン(PE)フォームなどの柔軟基材をアクリル系の粘着剤で挟んだもので、筐体とカバーガラスの接合で使用され、防水・防塵などの機能を持つ。遮光PETテープは、PETに黒印刷を施したもので、バックライトや液晶、光学フィルムの固定で使用され、遮光(光漏れ防止)機能を持つ。導電テープは、銅箔または導電不織布に導電粘着剤を塗布したもので、電磁波ノイズ対策として搭載部品の周辺に多用される。
 この他にも、セルを組む際に使うギャップ材や導電粒子、液晶漏れを防ぐシール材などを扱っている。モバイル向け製品は高機能品に特化し、半導体や有機EL、カーエレクトロニクス分野への対応を推進している。

―― 売り上げ構成は。
 長野 液晶向けが多いが、半導体とFPC向けも伸長している。製品別ではフィルムやテープ製品比率が高い。また、シール材や微粒子でもトップシェアの製品を有する。

―― 現在開発中の機能テープについて。
 長野 遮光PET粘着テープでは従来品の厚さ50~60μmに対して、15、30μmへの薄化を達成、近年高まるデバイスの薄化ニーズに対応した。信頼性は15μm、30μmともに必要な耐熱荷重水準の約2倍の性能を確認している。
 また、狭額縁化にも対応しており、テープ幅を従来品の1mmから半分の0.5mmに狭めても、耐熱荷重水準をクリアしている。

―― 製造方法と特徴は。
 長野 遮光テープの基材は黒印刷などを施すが、当社はピンホールや光抜けがないようなレベルの高い印刷の技術を持っている。
 額縁に使用するテープの通常の厚さは50~60μmだが、30μm以下となると通常の構造でこの性能をクリアするのはなかなか難しい。当社は独自技術で信頼性をしっかりと確保する。来年度には実際に端末への搭載を目標としている。

―― 薄化と高い接着力を両立できる秘訣は。
 長野 構成は主に粘着剤と遮光基材だが、粘着剤の分子構造を抜本的に変えている。材料は従来どおりアクリル系を使用しているが、分子設計技術により性能を向上している。
 粘着設計はモノマーの配合や分子量制御を行い、粘着付与剤や架橋剤を付与し独自の重合プロセスで粘着剤を合成している。この部分においてのノウハウが味噌となっている。

―― 狭額縁化が液晶のトレンドです。
 長野 筐体とカバーガラスの接合用テープにおいて、さらなる狭額縁化への対応が可能になった。従来の額縁幅1.5mmの半分以下の0.7mm幅でも従来品の3~4倍の耐衝撃性を実現している。この手段として、当社は従来型のフォーム基材の適正化に加え、フォームではない特殊衝撃吸収素材を基材とするテープの2種類を開発した。両タイプとも0.7mm幅が可能だ。

―― 狭額縁化対応を実現した秘訣は。
 長野 特殊衝撃吸収基材は、スマホ落下時などの実際の落下スピード、衝撃力を想定したときに、衝撃を最大限吸収できるよう粘弾性向上を追求したもの。粘着剤の性能にも、使用する原料モノマーの種類、粘着付与樹脂に独自のノウハウがあるので、その組み合わせで一定の性能を確保しながら粘着性や追従性を改良できる。両面の粘着剤設計が異なるデファレンシャル設計も可能で、顧客の要望に細やかに応えていく。

―― 耐薬品性は。
 長野 従来から、皮脂や油がスマホの隙間に入って、テープなどが剥がれてしまうという声があった。当社の開発品ではそれに加え、ハンバーガーなどに使用される植物油、日焼け止め、シリコンオイル、食器洗剤など近年複雑化する耐薬品性への要求に対応した。薄化・狭額縁などと組み合わせて製品化し、17年度中の端末搭載を目標にしている。

―― 導電テープの特徴について。
 長野 EMI関係で使用するテープで、両面と片面がある。金属粒子などで導電性を付与したもので、粘着性や高温保持力が高く、剥れや浮きが発生しにくい。通常は、大きな金属粒子が接着界面にあると接着性が落ちるが、小粒径フィラーを採用することで接着性の低減を抑えている。また、小面積、狭幅使用時の金属フィラーの存在量のばらつきも抑えられる。
 また柔軟な基材を使用することで追従性が上がり信頼性を上げている。こちらも薄化やさらなる機能付与に対応するべく開発を進めている。

―― 今後の戦略をお聞かせ下さい。
 長野 モバイル向けは、ハイエンドに対応した製品開発に注力したい。また、モバイルで培った高信頼性、耐熱などの技術を活用し、車載向けにも展開していきたい。例えば、耐薬品性をガソリンなどに対応できれば、車載向けにも展開が可能になると思う。

(聞き手・編集長 津村明宏/細田美佳記者)
(本紙2016年12月22日号6面 掲載)

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