商業施設新聞
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No.340

行政の商業開発「2例」


松山 悟

2011/11/1

 福岡県では、行政が商業施設を開発する計画が2件ある。その主人公は、響灘に面し、遠賀川の河口に広がる、人口1万5828人(2011年9月末現在)の小さな街・遠賀町と、政令指定都市であり、県都でもある福岡市である。

【CASE-1 遠賀町】
 芦屋町は、幹線道路の国道3号線から北に4キロほど入る。玄海灘に臨む漁港や自衛隊の基地がある。鉄道や適当な路線バスがないことから、現在、高齢者の「買い物難民」が問題化している。
 車さえあれば、町の中心部から7~8分ほどで国道3号線に出ることができ、ロードサイドには豊田通商の大型商業施設「グランモール」(ラ・ムー、ナフコなど)、GMSの「ゆめタウン」「ダイエー」、DSの「ルミエール」「トライアル」、食品スーパーの「マックスバリュ」、HCの「グッディ」、ドラッグストアの「コスモス薬品」などの店舗が建ち並ぶ。
 国道沿いへの商業集積の影響で、芦屋町の中心商店街は衰退し、閑散としている。買い物弱者と言われる高齢者は、生鮮食品や日用品を買えずに困っている。そこで、芦屋町が「歩いて行けるところに、食品スーパーを誘致しよう」と動いた。
芦屋町が公設民営方式で食品スーパーを建設する町営駐車場跡
芦屋町が公設民営方式で食品スーパーを建設する町営駐車場跡
 食品スーパーの建設を条件に、商店街にある町営駐車場を貸し出すことにした。公募提案競技を実施した。しかし、応募者はなかった。
 次に打った手は、建物まで町が準備(公設民営方式)するということで、再び食品スーパーを公募した。そして、10年12月に麻生芳雄商事㈱(福岡県飯塚市)が手を挙げた。その建物が、近く着工する運びである。12年春のオープンを予定している。

【CASE-2 福岡市】
 福岡市は、若者のファッションストリート「天神西通り」の南側入り口、国体道路沿いにある中央児童会館(同市中央区今泉1-19-22)の老朽化が進んでいることから、現在地で建て替えを計画しており、次期施設に商業施設の導入を検討している。
 中央児童会館の立地場所は、隣接に「TSUTAYA」の旗艦店、道を挟んで「アップルストア」がある福岡の中心商業地の一角で、建て替えに際し、高度化利用を考えている。現施設は、敷地面積1169m²に4階建て延べ2256m²で、児童館と中央保育園で構成している。
 児童館は現在地で新築となるが、中央保育園は別の場所へ移転を決めている。このため、新施設はスペースに余裕があり、物販、飲食など全般的な商業施設を導入する方針。11年度で民間事業者に参入の意向調査を実施する。事業手法については、①PFI導入、②定期借地、③従来方式から決めるとしており、比較調査業務を近く専門コンサルタントに委託することになる。今後、順調に進めば、12年3月にも整備方針を固める。
福岡市が建て替えで商業施設導入を検討している中央児童会館
福岡市が建て替えで商業施設導入を検討している中央児童会館

 郊外型商業施設に押され、中心商店街の空洞化が進む遠賀町。中心商業地の一角にある公共施設用地の活用を図る福岡市。
 置かれた立場は異なるが、街の活性化を図るという目的は一緒だ。街づくりにおいて商業施設が果たす役割の大きさを改めて実感する。

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