(一社)日本フードサービス協会によるマスコミ懇談会(9月上旬開催)に参加したところ、外食産業市場の売り上げは、7月に前年比5.9%増となり、8カ月連続で前年を上回ったと報告された。ファーストフードは洋食が牽引して9.8%増、ファミリーレストランは3.8%増、ディナーレストラン業態は7%増、喫茶業態も1.5%増だった。パブ・居酒屋業態は、パブ・ビアホールがビアガーデンの好調で2.3%増(3カ月ぶりの前年超え)だったが、居酒屋業態だけが店舗削減の影響で前年比6%減少した。2015年1年間の外食産業市場規模は25兆1816億円と推計され、同2.2%の増加だった。日銀の政策に逆行してデフレに戻った消費経済の中で、外食産業は知恵を絞って需要を探し健闘している逞しい業界と言える。
日本フードサービス協会の菊地唯夫会長(ロイヤルホールディングス(株)会長)は、「外食産業を取り巻く景況感は、個人消費が不透明で、消費マインドは改善していない。将来の生活に対する不安などから消費者の節約志向は根強い一面がある。外食産業は、天候や社会情勢が敏感に影響する業界で、16年は残りあと数カ月だが、まったく油断できる状況ではない」と気を引き締めながら、外食産業の生産性向上について3つの論点を提言した。
1つ目は、産業の在り方。同氏は「経済の成熟化とともに、多店舗展開の優位性は相対的に低下し、さらに20年間のデフレが業界を超えた過剰な価格競争を招き、産業全体を疲弊させてきた。外食産業の将来を考えた場合、適正な対価を得られる持続可能な新しいモデルへの変革が必要」と述べた。要するに利益効率の高い産業への脱皮を遂げたいということだと思うが、一消費者の立場からは美味しさ、接客の良さに加えて、価格の安さは大きな魅力の1つとなるので、顧客からの意見を合わせて考えると複雑な問題になるだろう。
2つ目は、社会的環境の変化。同氏は「消費者の価値観の多様化に加えて、企業としての社会的責任への意識の高まりに対して、業界として商業活動と両立させて応えることは、持続性のある産業化を進めるために不可欠」とした。ごもっともである。
3つ目は、社会的枠組み。同氏は「外食産業は制度的枠組みの影響を大きく受け、特に軽減税率は公平性、合理性を欠く(コンビニのイートイン、テイクアウトと比べて不利)もので、外食産業の将来に過度の負担を強いる」と批判した。同協会は、外食産業の礎を築き、業界の将来を提言できる「生産性・付加価値向上委員会」を新設し、具体的な取り組みを検討している。
外食産業は、人々の日常生活とその気分転換に重要な役割を果たす。希望と夢を与えてくれる同業界のサービスは社会にとって不可欠だ。今後を応援したい。