電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第205回

半導体向けシリコンウエハー出荷面積は2018年まで過去最高水準


~IoT絡みのメモリー出荷と車載向け半導体が押し上げていく~

2016/10/21

 「2016年の年明け段階では半導体の出荷状況および設備投資は、少しく元気がなかった。スマートフォン(スマホ)、パソコン、液晶テレビの3大商品が低調であるだけに、半導体は下降局面に入ったと見るのが当然であった。しかしてどういうことか。ここ数カ月はかなりの勢いを増しており、しかもこの勢いがロングに続くとの予想も出てきた。半導体はもう一度黄金時代に入る可能性すら出てきたのだ」

 かっと目を見開きながらこう語るのは、大手証券の著名な半導体アナリストである。現状においても、足元のITを巡る市況は決して良くない。期待を集めたiPhone7も今のところは、かつてのような爆発的な売れ行きが予想されるようなトーンにはない。そしてまた、Galaxy Note7の販売打ち切りを決めたサムスン問題も、これに拍車をかけている。サムスンのスマホ事業は営業赤字に転落するとの見方も出てきたのだ。

 ところが、である。サムスンは16年上期で15兆ウォンの営業利益を荒稼ぎしており、Galaxy Note7の品質関わる一大失態があったにも関わらず、収益はなお高水準を維持しているのだ。これを支えているのが、ひとえに好調な半導体事業なのだ。とりわけサーバー向けのフラッシュメモリーは絶好調で推移している。

 こうした状況を見ても半導体の最大の牽引車であるITの主力製品であるスマホ、パソコン、液晶テレビがサチってきても、次の巨大アプリが出てきたとみるのが適切だろう。それがすなわち、言うところのIoT(インターネット・オブ・シングス)である。

 まず、一気に展開しつつあるのが、データセンターの急増と主要記憶媒体のハードディスクからの置き換え効果によるフラッシュメモリーである。3D-NANDで先行するサムスンを東芝が追撃する状況となっているが、この2社ともに17年は、それぞれ1.5兆円規模の大型新工場を建設する計画であり、これに加えて後発の中国の長江ストレージも2.4兆円を投入するフラッシュメモリー新工場建設に着手する。これらが立ち上がるだけで、シリコンウエハーの出荷面積は間違いなく拡大するだろう。

 IoTで次に期待されるのが車載向けデバイスである。東芝も車載向けIoTに注力すべく自動運転システムの一括提供に踏み切る。ここでは同社の車載向けシステムLSIの最新版である「ビスコンティ4」が搭載されるのだ。ソニーもまた車載向けイメージセンサーの一気投入を予定しており、これに対応する設備投資を充実させるものとみられる。

 もちろん車載向けの電力制御に貢献するパワー半導体についても、インフィニオン、三菱電機、富士電機、ロームなどが投資を考えている。車載向けマイコンの世界でも世界チャンピオンであるルネサスが大型M&Aを実行し、これまた増産体制を敷いていくだろう。そしてまたインテルが車載向けIoTチップについては、自社設計を止めてARM(今や日本のソフトバンクの所有する会社になった!)を全面採用することを決め、設備投資計画を練っている。こうしたIoT効果は、驚くべき勢いで半導体の需要を押し上げていく原動力になってきた。

 SEMIによれば、半導体向けシリコンウエハーの合計出荷面積は、16年で104億4400万平方インチ、17年は106億4200万平方インチ、18年は108億9700万平方インチと予測されている。3年連続で過去最高値を更新していくというが、筆者に言わせれば、こうした微増状況とはとても思えない。

ヘッドマウントディスプレーの仮想現実は新たな世界を切り開く
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 最近では、スーパー家電といわれる新たな高付加価値型の家電も出てきている。そしてまた、高成長が予想されるロボット産業も多くの半導体、センサーを積み込む。ゲーム機においてもPSVRに象徴される仮想現実の世界が一気に広がる見通しだ。新たな成長アプリを見つけ出しつつある半導体産業は、再びの快進撃を開始することも十分に考えられる情勢となってきたのだ。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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