2016年1月に買収が完了したインターナショナル・レクティファイアー(IR)に続き、16年7月には米クリー子会社でSiCデバイス/ウエハー、GaNデバイスを手がけるウルフ・スピードの買収を発表した独インフィニオンテクノロジーズ。業容拡大を進めるなかで、日本国内に関しては車載用半導体市場を中心に存在感を高めている。日本法人社長の森康明氏に現況および今後の事業戦略を伺った。
―― まずは車載を中心に足元の市場環境をどう見ていますか。
森 自動車市場は引き続き堅調に推移している。生産台数は年率で1~2%成長という水準にとどまっているが、1台あたりの半導体搭載容量はEV/HEV化の進展に伴って拡大している。加えて、これにADAS(先進運転支援システム)搭載が進めば、さらに搭載金額が増える見通しで、我々も大きな期待を寄せているところだ。
―― 車載用半導体市場も今後も堅実な伸びが期待できそうですね。
森 調査会社のIHSによれば、15年段階での車載用半導体の市場規模は290億ドルだ。20年までの5カ年のCAGR(年平均成長率)は5.7%と見込まれており、産業機器向けに次いで高い成長率が見込め、半導体市場全体のCAGR1.9%も大きく上回る水準だ。一方で、ADAS向け半導体については、また別の次元で大きく成長している。
―― ADAS分野における貴社の事業領域は。
森 ADASシステムは大きく分けて、情報を得る「Sense」、その情報を処理する「Computing」、最終的にその情報をもとに制御する「Actuate」で構成されている。我々は「Sense」の場合ではミリ波レーダーを手がけているほか、「Computing」ではマイコン、「Actuate」ではパワーデバイスを展開している。現状でADAS市場におけるカバー率は30%であり、これを今後高めていく必要がある。
―― 自動車の技術革新で半導体メーカーが求められる役割も変化していますか。
森 車載市場における最初のステップは単品商売で良かったが、今それをやっているとユーザーと対話ができなくなってしまう。システムをしっかりと理解して、システムレベルでユーザーに提案できるようにならなければならず、ここについては、かなり力を入れて体制を強化してきた。同時に品質サポート体制も強化することも重要で、取り組みを強化している。
―― 都内に解析ラボを新たに開設しました。
森 IR社の買収に伴い、これまで別々だった日本の解析ラボを集約し、解析機能などを大幅に拡張するかたちで、15年12月に都内に新たにオープンした。今まで海外に製品を送らなければならなかったケースもあったが、機能を拡張したことでTATを短くでき、ユーザーへのレスポンスを大幅に早めることができた。直近でも解析・分析関連の設備を追加で導入し、機能を強化した。日本にファブはないが、充実した評価・分析機能を持っていることで高く評価されていると自負しており、我々に対する期待値が高まっているのは強く感じている。
―― 国内ビジネスの状況と、今後の取り組みをお聞かせ下さい。
森 詳しい数字はお答えできないが、車載が成長ドライバーとなって過去5年間のCAGRは15%を超えている。今後の取り組みについてはADAS市場を中心に、外部のパートナー企業と連携した枠組みづくりを積極的に行っていきたい。ADASのさらなる普及を見据えた場合、全部一人でできないのは明白だ。
(聞き手・稲葉雅巳記者)
(本紙2016年9月22日号1面 掲載)