夏休みに石垣島へ行った。石垣島は、19の島々からなる八重山群島の拠点になる島である。鹿児島から約1000km、那覇から約400kmの南に位置し、台湾までは277kmしかない。
島の大きさは沖縄県内で沖縄本島、西表島に次いで3番目。空港は新石垣空港で2013年3月に開港した。新空港の愛称は「南ぬ島 石垣空港」。南ぬ島は、「ぱいぬしま」と読み、南の島の意味だという。開港して4年が経つが、まだ真新しさを感じる。
行政区分は石垣市。人口は約4万9000人で、このほか、住民票を移していない本土からの人間が数千人いるといわれている。中心市街地は八重山群島の各島に行く離島ターミナルがあるエリア。高いビルはないが、意外と広い範囲で市街地化されていた。家屋は台風に備えてコンクリート造りがほとんど。風に風化した看板やコンクリートが旅情を誘う。
川平湾は、石垣島の観光案内に必ず掲載されている観光スポットだ。ここのグラスボートに乗った。船内は中央の底がガラス張りで、海中が見えるようになっている。ガラス張りを囲むように席があり、先客とのバランスを考えて席に座る。
操船する青年が慣れた口調で、ガイドを兼ねている。サンゴのポイントがいくつかあり、沖から順に見て行った。サンゴは動物で、沖縄には340種類くらいいるそうだ。初夏の満月の夜、サンゴが産卵すると、海面がピンク色に染まるという。
サンゴに集まる青い小さな熱帯魚、ファインディング・ニモのモデルとなったカクレクマノミ、大きなシャコ貝、まさに自然水族館であった。
次に西表島。沖縄本島に次ぐ面積の島だが、島の90%はジャングルだ。離島ターミナルから高速艇が出ていて、西表島の上原港までの所要時間は約50分。ここでカヌーに乗る。透き通った海からマングローブに囲まれた川を上っていく。川面が木漏れ日できらきらしている。
上流から綿毛のようなものが静かに流れてきた。「あれはサガリバナという花。夕方から咲き始め、朝方に散る一夜限りの花」と、ガイドが教えてくれた。
そして由布島。西表島東側の海岸そばにあり、海流によって堆積した砂だけでできた島で、周囲約2kmの小さな島である。水牛車で島に渡り、島には亜熱帯植物園などがあり、観光地になっている。
本当にのんびりした島だった。水牛の御者は、三重県の自動車工場を定年退職して移り住んだ、と話してくれた。
南の島にスローライフを求めて来る人は少なくはない。ゆっくりした時の流れのなかで、何を考えているのだろう。いや、何も考えられないのが、いいのかも知れない。