2016年の半導体設備投資は、足元で3D-NANDフラッシュが製造装置需要を大きく牽引する存在となっている。SSD用途を中心に、スマートフォン(スマホ)分野での採用も始まる見込みで、主要各社は一部投資を前倒しするケースも出始めている。こうした、3D-NANDの投資拡大の恩恵を受けているのが、縦型熱処理装置を主力とする(株)日立国際電気だ。4月から半導体製造装置事業のトップに就任した金井史幸氏に足元の市況および今後の事業戦略について聞いた。
―― まずは市況に対する見方について、ここ2~3カ月で変化はありましたか。
金井 3D-NANDに関しては米国メーカーを中心としたメモリー投資が活発化している印象であったが、韓国メーカーの投資再開に伴う受注貢献が当初予定よりも前倒しで期待しているところだ。しかし、確証を得ているわけではないので、私たちも今後の顧客の動向を注視している。最近の傾向として、顧客は直前にならないと装置の正式発注を行わないので、我々もそれに即座に対応できるよう、あらゆる角度から情報収集する必要性が求められるようになってきている。
―― DRAM投資は。
金井 上ぶれも期待したいところだが、やはり年内の投資という意味では厳しい状況が続いている。15年に大きな微細化投資があったことによる反動減に加え、足元のDRAM市況の悪化から、各社とも投資を抑制している。1Xnm世代の投資が寄与してくるのも、来年以降というのが我々の見方だ。そういう意味では今年の当社のメモリー向け装置売上高はフラッシュメモリー中心の構造になっている。
―― わかりました。改めて15年度(16年3月期)業績の総括をお願いします。
金井 15年度上期(4~9月)は、年初から活発化した韓国メーカーのDRAMの微細化投資と春先からの3D-NAND投資が大きく牽引した。15年度下期は落ち込むと見込んでいたが、米国メーカーの3D-NAND投資が貢献したほか、サービス事業も特殊要因を含めて売り上げ拡大につながった。
―― サービス事業拡大の要因は。
金井 ここ数年のサービス事業については大きな手応えをつかんでいる。今までサードパーティーに取られていた仕事を取り返すことができている。顧客は投資の効率化を重視するようになってきており、コンポーネントの供給や装置の改造案件も増えるなど、一気に拡大とはいかないが、着実に事業を大きくできている。15年度実績では、半導体製造装置事業の売上高906億円のうち、サービス事業は特需要因もあって約3分の1の294億円と、構成比は一時的に高くなっているが、中期的には売上高の3割をサービス事業でまかなっていきたい。
―― 今後の製品戦略は。
金井 縦型熱処理装置については、新型の「AA-300」の拡販をDRAM、NAND双方に進めていく。また、バッチ式だが高品質な成膜が可能な独自のBCD(Balance Controlled Deposition)技術を最適化した装置の受注活動も17年から本格的に進めていく。
―― 4月の説明会ではトリートメント装置の話も出ました。
金井 膜の性能を改善・補修する装置で、16年度から一部業績に寄与し、17年度から大きく花開かせることができればと思っている。現在、顧客で評価してもらっており、数社からはPOR(Process of Record=顧客側ラインでの承認)を獲得している。トリートメント装置は顧客である半導体メーカーとしては、なるべく余計な工程を挟みたくないというところもあると思うが、今後の成膜プロセスを考えれば、より不可欠なものになってくるのでないか。
―― 生産体制について教えて下さい。15年11月に富山工場での新棟建設を発表しました。
金井 今回の新棟建設は装置の生産キャパシティーよりも、我々の開発機能の拡充を狙ったもので、新棟稼働で開発キャパは50%引き上がることになる。これまで既存棟で行っていた装置の生産を新棟で行い、既存棟の空いたスペースを研究開発フロアとして活用していく。生産フロアは新棟を活用することで大きくなるが、新型のトリートメント装置などを今後扱っていくので、1台生産するのに必要なスペースが増えてくるので、月産の生産キャパシティーが増えるわけではない。現在、建屋建設を進めているところで、予定どおり17年1月から稼働を開始する。
(聞き手・稲葉雅巳記者)
(本紙2016年7月14日号8面 掲載)