電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第182回

日本勢がトップ疾走のセンサーはIoT時代を切り開くカギ


~2020年には10兆円以上の巨大マーケットが期待できる~

2016/5/6

 IoT(インターネット・オブ・シングス)という一大技術革新が世界で巻き起こっている。これはすべてのモノとコトをインターネットにつなぎ、新たな社会インフラを構築していくものだが、日本政府もここに来て「アベノミクスの重要戦略はIoTにあり」と言い始めたのだ。政府筋はとりわけ日本企業が世界シェア40%を持つセンサー分野、同じく世界シェア60%を占有し圧倒的に強い日本の産業向けロボット産業を強化すべきと考えており、ここが世界のIoTにおける日本の活躍ステージになっていくと見ているのだ。

 IoT時代にあっては、あらゆるものをセンサー、マイコン、ビッグデータなどでネットワーク化し、新たなロボット産業、すべてに通信可能な自動車のコネクテッド化、次世代ヘルスケア、新時代対応のエネルギーが実現される、といったイメージがある。つまりは、全世界のあらゆるインフラをインターネットにつなぐことで、超便利で暮らしやすい未来社会を構築しようというのだ。

 例えば、中国政府は新しくできる橋すべてにセンサーを付けるという規制を整備させている。今後はあらゆる国で橋、トンネル、公共建築物、病院、さらには一般家庭にまで送受信センサーモジュールが付くことになる。こうした社会インフラ分野では半導体、電子部品、センサーを融合したモジュールが主役となる状況が必ず訪れるといわれる。
 米国のトリリオンセンサープロジェクトは2023年に年間1兆個のセンサー(現在の100倍)が必要と指摘しているが、指数関数的に将来を見渡せば1兆個ではとても済まない、という意見もある。総量として何と45兆個が必要という声さえあるのだ。

 JEITAによれば、センサーの世界市場は11年段階で2兆円弱であったが、15年には3兆円を超えてきた。20年には実に11年比3倍の6兆円弱になると予想されている。しかして筆者の意見としては、こんな金額では済まないと思う。東京オリンピックを迎える20年には少なくとも10兆円以上の巨大マーケットになっていくことは間違いない。
 生産現場におけるIoTシステムの導入は加速度的に進んでおり、日本の大手企業もすでに100社以上がすべての工場、事業所、研究所、営業所などをIoTシステムで再整備するという投資を考えているからだ。センサー大活躍の舞台が整いつつある。日本勢はセンサー全体の世界シェアの30~40%を握っており、今後も世界トップを疾走していくことは間違いないだろう。

 センサーといっても様々な種類に分かれている。JEITAの予想によれば、20年のセンサー需要額約6兆円のうち、最大のものは光度センサーであり全体の27%を占める。この主役は何といっても人間の目に当たる半導体であるCMOSイメージセンサーだ。次に慣性力センサー22%、圧力センサー20%、磁界センサー15%、その他13%となっている。


 今や自動走行運転が世界の話題となりつつあるが、そうした先進運転支援システムにおいてもセンサーは大活躍するのだ。すなわち、単眼カメラ、ステレオカメラ、ミリ波/準ミリ波レーダー、レーザーレーダー、超音波センサー、走査型リーダーなどが重要であり、ここにも膨大なセンサー需要が生まれてくる。

 単眼カメラやステレオカメラにおいては、CMOSイメージセンサーで圧勝するソニーをはじめパナソニック、オムニビジョン、メレキシス、アプティナ(現オンセミ)などのセンサーデバイスメーカーが活躍する。日本メーカーだけを拾って言えば、ミリ波レーダーでは三菱電機、レーザーレーダーでは浜松ホトニクス、住友電工デバイス、超音波センサーでは村田製作所、日本セラミック、走査型レーダーでは浜松ホトニクスが出番を迎えている。

 半導体技術を駆使するCMOSイメージセンサーを除けば、センサーデバイスのほとんどは一般電子部品というジャンルのデバイスになる。現状で約25兆円の世界市場を築いている分野ではあるが、日本の電子部品企業はマーケットシェアの約40%を握っているといわれる。IoTシステムがもたらす市場は、20年度でおおよそ360兆円とまで言われており、数十年後には900兆円にまで膨れ上がるという。
 IoTの電子デバイスにもたらすインパクトは、どでかいことは間違いない。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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