KUKA Roboter(独アウクスブルク、日本法人=横浜市保土ヶ谷区神戸町134、Tel.045-744-7531)は、ドイツに本社を置く産業用ロボットの専業メーカー。革新的な製品を次々と市場に投入し、現在、世界トップクラスのシェアを有している。日本法人であるKUKAロボティクスジャパン(株)の代表取締役社長の星野泰宏氏に話を伺った。
―― 貴社の製品について。
星野 専業メーカーとして様々な用途・作業に対応できる産業用ロボットをフルラインアップしており、可搬重量も5kgから最大1300kgまで対応でき、350種類以上の製品を取り揃えている。ユーザーからは、当社のロボットの精度、安全性、長期信頼性などに加え、技術の革新性の高さも評価いただいている。そのためロボットが多く導入されている自動車関連や電子・電機分野以外での採用事例も多く、欧米の医療機器メーカーでは当社のロボットアームを活用した画像診断装置や放射線治療装置が製品化されている。
―― 日本での展開は。
星野 日本法人を2007年に設立し、本格的な展開を開始した。後発の参入であり、高い精度が要求されるニッチな分野から市場の開拓を進め、少しずつ実績を積み上げていった。そのなかでレーザー加工や切削に用いるロボットなどで評価を得て、日本での認知度も高まっている。最近は協働型ロボットへの引き合いが増加している。
―― その協働ロボットについて詳しく。
星野 協働型の7軸多関節ロボット「LBR iiwa」を展開している。7軸すべてにトルクセンサーを搭載しており、力を制御しながら様々な作業が行え、部品が正確に配置されていない場合でも、その位置を特定して自ら調整するといったことが可能だ。
また、トルクセンサーはわずかな外力にも反応するため衝突から人を安全に保護することができ、エッジのない流線型のフォルムを採用することで安全性をより高めている。
可搬重量は7kgと14kgをラインアップしており、ダイレクトティーチにも対応。また、世界中で一般的に使われているプログラム言語「JAVA」にも対応しており、ロボット特有のプログラミング知識がなくても、ティーチングできる非常にオープンな環境のロボットだ。当社では、この協働ロボットと台車型移動ロボットと組み合わせた製品もラインアップしている。つまり協働ロボットが自ら移動しながら様々な作業を行うことができ、拡張性が非常に高い製品だ。
―― 日本市場を展開するうえで重要な製品となりそうですね。
星野 そのとおりだ。最近、協働ロボットの注目度が向上しているが、当社は09年に製品を市場投入するなど、この分野にいち早く取り組んでおり、豊富な実績とノウハウを有する。先にも述べたように、日本市場において当社製品はニッチな分野での採用が多いが、16年以降は協働ロボットをキーアイテムとして、自動車関連や電子・電機など市場規模の大きい分野への展開も強化していきたいと考えている。
加えて、「mx. Automation」という製品の提案も強化していく。これは外部のPLCもしくはPCに工業用のイーサネットをつなぐことで、ティーチングペンダントなどは使用せずに複数台のロボットを1カ所で集中制御できるシステムで、今後のIoTやM2Mといった分野を見据えた商品だ。
―― 直近の需要動向は。
星野 KUKAグループ全体では、15年の売上高は前年比41.5%増の29億6590万ユーロと大きく伸長した。当社では14年後半に物流施設などの自動化システムを展開する「Swisslog」を買収し、その売上高が加わったことが大きいが、そのSwisslog社の業績を除いた比較でも11.9%の増収と2桁成長を達成できた。日本市場も、当社の認知度が向上して顧客層が拡大したことから好調に推移した。
―― 生産体制は。
星野 製造工場はドイツと中国・上海に拠点がある。日本には横浜市の拠点に人材トレーニングや性能テストなどが行えるテクニカルセンターがあり、実際にワークを持ち込んでテストもできる。日本の生産現場の方が欧州の製造方式を知ることができる場所は少なく、当社としてはこのテクニカルセンターなどを通じて、テストだけでなく新しいソリューションをともに生み出していければと考えており、もし生産の自動化・効率化などでお困りごとがあればお声がけいただければと思う。
―― 今後の方針を。
星野 当社はこれまで革新性の高いロボット製品を常に市場に提供し、事業を拡大してきた。今後もそのスタンスを変えることなく、革新性のある製品を提供し続けていきたい。その1つとしてドイツの本社と連携し、ドイツ発の製造業高度化プロジェクトである「インダストリー4.0」に関連した製品も今後投入していく予定で、日本のものづくりの力と融合させていきたい。そして20年までにKUKAロボティクスジャパンの売上規模を現状の2倍にすることを目指す。
(聞き手・浮島哲志記者)
(本紙2016年4月14日号9面 掲載)