電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第165回

NXPセミコンダクターズジャパン(株) 第一営業・マーケティング本部長 三木務氏


車載半導体のトップサプライヤー
革新的レーダー技術が自動運転実現を加速

2016/4/8

NXPセミコンダクターズジャパン(株) 第一営業・マーケティング本部長 三木務氏
 NXPセミコンダクターズ(オランダ、日本法人=東京都渋谷区恵比寿4-20-3、Tel.0120-950-032)は、車載や認証、インフラ・産業機器、コンシューマー機器など、多岐にわたるエンドマーケット向けに、ミックスドシグナルやプロセッシング・ソリューション、高出力RFなど、多様な製品を提供している。
 2015年12月には、フリースケール・セミコンダクタとの経営統合も完了し、半導体産業を牽引するリーディングサプライヤーが誕生した。同社第一営業・マーケティング本部長の三木務氏に、自動車関連を中心としたビジネス戦略・成長戦略について伺った。

―― 15年末からフリースケールと経営統合し、新生NXPがスタートしました。改めて、貴社の概況・強みについてお聞かせ下さい。
 三木 15年12月7日から、フリースケールと統合した新生NXPとして事業をスタートさせた。売上規模(14年度ベース)は100億ドルを超え、事業規模は業界第5位(メモリーメーカー除く)のグローバルサプライヤーとなった。また、35以上の国・地域で、従業員約4万5000人を擁し、9000件以上のパテントを有している。
 なお、旧2社の製品群は重複する部分が少なかったことから、今回の統合により、一層幅広い製品ソリューションを提供することが可能となった。

―― 車載関連においては、業界トップのサプライヤーと位置づけられます。
 三木 周知のとおり、両社とも従来、車載分野には非常に力を入れてきた。このため、例えば当社がリードする車載インフォテインメント分野では、旧NXPで手がけてきたラジオDSPやオーディオ・パワーアンプなどと、旧フリースケールのマイコンを組み込んだかたちで、新たな提案をすることが可能となる。
 今後は、車載の様々なアプリケーションにおいて、総合的なソリューションを提供することができる。

―― ADAS(先進運転支援システム)や、その先にある自動運転に向けた製品戦略について。
 三木 自動運転の実現に向けては、センサーフュージョンが不可欠となる。クルマに搭載されている様々なセンサーからの情報をベースに、操舵系やパワートレイン系を高精度に制御する必要があり、当社が持つMEMSセンサーやミリ波レーダーなどのセンサー類と、高性能プロセッサーの組み合わせによるソリューションが重要なカギを握る。

―― コア技術の1つであるミリ波レーダーについて。
 三木 今後、高いレベルでクルマの安全性を確保していくためには、レーダーにおいて、より高精度での距離やアプローチスピード、アングルデータなどの計測が求められる。さらに、1つのセンサーに対して、複数の安全システムに対応する汎用性、また複数の対象物に対する優れた認識性能なども求められてくる。
 そこで当社では、従来のSiGeベースの77GHzミリ波レーダー(長距離向け)に加え、新たにCMOSベースの製品を開発した。より小型で短距離から中距離までをカバーする統合的なソリューションの提供が可能となった。

―― CMOSベースミリ波レーダーの特徴や今後の展開について。
 三木 クルマの周囲を360度センシングするためには、当然、複数個のセンサーを搭載する必要があり、より小型かつ低消費電力、低コストの製品が求められる。当社では、1月にCMOSシングルチップ77GHzレーダー・トランシーバ(7.5mm角)を発表した。同チップやシグナル・プロセッサー、CAN-FD、パワーSBCなどを搭載したレーダーシステムは、基板サイズ35×35mm、消費電力4Wとしており、車両のどこにでも人目に触れないかたちでシステムを組み込むことが実現できる。
 これまで、超音波センサーや24GHz準ミリ波レーダーが主に採用されていた駐車支援や後方検知(死角検知)、緊急ブレーキなどのアプリケーション(短距離~中距離)への対応が視野に入り、既存のSiGeベース77GHzミリ波レーダー(長距離用)とあわせて、より幅広いレンジに対応するレーダー製品を提供できる。なお、このレーダーシステムはプロトタイプ品の提供をすでに開始しており、グーグルが進める自動運転プロジェクトの実施試験にも採用されている。

(聞き手・清水聡記者)
(本紙2016年4月7日号2面 掲載)

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