商業施設新聞
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
No.551

人材不足は大きな問題に


若山 智令

2016/4/5

 気温が高くなり、桜も咲いていよいよ春がやってきた。この時期になると、真新しいスーツに身を包んだ新社会人や、会社説明会などに向かう就活生の姿をよく見かける。明るい将来を目指す若者に「頑張れ」とエールを送ると同時に、現在起こっている様々な業界の人材不足は、社会的に大きな問題となっている。

 人口の減少や高齢化などの影響で、労働力の低下が深刻になっている。帝国データバンクの調査(2015年1月19日~31日、調査対象2万3402社、有効回答企業数1万794社)によると、正社員の人材不足を感じている企業は約4割で、正社員数が適正と答えたのは約5割、過剰と判断しているのは約1割だという。特に不足と感じているのは情報サービスが約6割で最多、続いて建設、医薬品・日用雑貨品小売り、放送、旅館・ホテル、人材派遣・紹介、運輸・倉庫で不足感が目立つ結果となった。

 上記は1年以上前の調査結果だが、現在でも小売りや外食業界では、ショップスタッフや販売員の確保に苦労している企業が少なくない。話を聞くと、人手が足りないために出店が進まない、人材を適切に配置できないため、結果的に接客サービスの質が落ち、売り上げが伸びないといったケースもあるようだ。ショッピングセンター(SC)の業界団体であるSC協会も、SC業界の人材不足を危惧しており、人材確保小委員会の新設や、人材不足対策におけるセミナーを開催して対策を打つなど、業界全体の大きな問題と捉えている。

 また、物流業界の人材不足も取り上げたい。近年のeコマースの普及により、物流施設数は急増の一途を辿り、2016年度は過去最多の面積の開発が想定されており、17年度もこれに匹敵するほどの開発が見込まれている。加えて施設の大型化、多様化が進み、労働力の確保が厳しい状況になっている。こうした課題に対応するため、施設側では人材派遣会社と提携して、不足を補う対策を講じるなどの対策を取り、さらに賃上げ、マイカー通勤ができるような大型駐車場の整備、環境の改善などで労働力の確保に努めている。

幸楽苑はインテリジェンスと提携し、優秀な人材の確保を目指す
幸楽苑はインテリジェンスと提携し、
優秀な人材の確保を目指す
 一方、トラックドライバーの高齢化という問題もある。過酷な労働環境のイメージがあってか、なかなか人が集まらない、定着しない状態だという。今後、ネット通販などeコマースのニーズはますます高まり、さらに人手が必要になってくるだろう。特効薬のようなものは見当たらないが、業界全体で考えるべき由々しき事態である。

 外食業界では、幸楽苑が人材サービス大手のインテリジェンスとパート、アルバイト採用における業務提携を3月1日から開始。1000店を目指す上で、優秀なスタッフの採用、マネジメントを達成するためにタッグを組んだ。こうした取り組みは今後多くなっていくと個人的には思っている。

 優秀な労働力の確保は戦略上重要だ。情報は多ければ多いほど優位になる。競合他社より一歩でも先を行く動きができれば、人材確保においても優位性が出てくるはずだ。
サイト内検索