電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第176回

山形県の新庄中核工業団地は企業進出相次ぎ好調に推移


~今や話題のバイオマス発電のマルカ林業や協和木材が進出~

2016/3/25

山形県新庄市 企業立地・商工振興室 渡辺安志室長
山形県新庄市 
企業立地・商工振興室 渡辺安志室長
 「ここにきて新庄中核工業団地の分譲は急ピッチで進み始めた。いまや注目のバイオマス発電の柿崎工務所の子会社進出を含め、ここにきて3件の新立地が決まっている。新庄市といえば、国重要無形民俗文化財の新庄まつりばかりが有名であるが、企業集積においても頑張っていることを多くの人に知ってもらいたい」


 こう語るのは山形県新庄市商工観光課にあって企業立地・商工振興室の室長を務める渡辺安志氏である。ファイトマンとして知られる渡辺氏は投資が見込める企業情報を聞きつければ、すぐにも動くという敏捷さを持っている。そして何よりも新庄の町を愛してやまない男なのだ。

 新庄市が分譲を進める新庄中核工業団地は、山あいのふもとに位置する立地条件であり、風光明媚なところだ。山形県北部に位置する最上地域は、新庄市を中心とした8市町からなる地域である。何と総面積の8割が森林であり、豊かな自然と食・温泉・祭りなどの様々な観光資源にも溢れている。

 新庄中核工業団地の立地企業は実にユニークなカンパニーが多い。新庄エレメックスは半導体関連の工場として知られ、かつて大手の半導体企業の量産にかなり貢献してきた。山形東亜DKKは牛の胃袋に入れるセンサーを開発し、今後の大ブレークを狙っている。山形メタルはファイバーレーザー加工機やプラズマ切断機、立体マシニングセンターなどの設備を持ち、建築用内外装パネル、建設機械部品製造、各種機械加工などを行っている。業績は好調であり、すでにこの工業団地に立地しているが、新たに1万3000m²の拡張用地を取得した。

 さて新庄市は総人口が3万7085人であり、残念ながら人口はかなり減り続けている。しかし、1999年12月に長年の夢であった山形新幹線の新庄延伸が実現し、東京とは1本でつながることになった。また道路では将来に東北中央自動車道の一部となる尾花沢新庄道路が、1999年11月に一部共用開始となり、これと連続し秋田方面に延びる新庄北道路も2011年には開通した。山形と宮城をつなぐ2つの路線も徐々に整備されている。こうした交通条件の整備が進んだことで、新庄は交通至便な町となり、企業誘致については有利に働くようになってきた。

 ところで新庄市長の山尾順紀氏は新庄北高校を卒業し、大正大学仏教学部で学び、新庄市役所に長く勤務していた経験がある。98年に市役所を退職し、円満寺というお寺の副住職(後に住職)となり、次に新庄市会議員を2期連続で務めた。そして07年9月に新庄市長に就任し、2期連続でぶっちぎり当選を果たしている。山尾氏はお坊様であるからして、人を教えるということを大切にしており、常々口にしているのが次のようなことだ。
 「人口を増やし過疎状態から脱却するために必要なことは、やはり企業誘致にあるだろう。しかしながら、ものづくりにとって一番重要なことはそこに働く人材なのだ。新庄という町を活性化させるためにはまず教育を充実させ、優秀な人材を育てあげなければならない。これが一番大切なことだ」

 ここにきて新庄中核工業団地には2件の大きな新立地が決まった。1件は柿崎工務所(新庄市)の子会社であるマルカ林業がバイオマス発電事業を手がけるべく、5haを取得したのだ。次に国産材製材業で最大級として知られる協和木材(東京都)が、11haを取得し、新たな集成材工場を設けることを決めた。同社の年間の原木消費量は約30万m²に及び、国産材においては最大規模のメーカーなのだ。これまでのメーン工場は福島県東白河郡の塙町にあり、塙工場は敷地14万7990m²、集成材工場は敷地8万5300m²を擁している。

 「森林が豊かな最上地域は樹齢200年以上の見事な杉が立ち並ぶエリアであり、日本の故郷ともいうべき棚田も数多い。そして250年以上の歴史を誇る新庄まつりの山車行列は、江戸時代の歴史絵巻の世界に引き込まれるかのような魅力を放っている。すべてが手作りのまつりであり、私たちをはじめ市民は総出になってこのまつりを守ってきた。進出企業の皆様も、この新庄まつりを盛り上げることに協力を惜しまない。山あいの町である新庄にも、企業立地の新たな光が見えてきたことは泣けるほど嬉しい」(渡辺室長)


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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