JR西日本 広島鉄道病院(広島市東区二葉の里3-1-36、Tel.082-262-1170)は、1月10日に新病院の開院式典を行い、1月18日より新病院での診療を開始した。駅前立地を活かし、がん治療に強く便利な急性期病院とする。
新病院は、旧病院に代わるものとして、その東側の敷地を使い、7階建て延べ約2万2000m²(敷地面積約1万5000m²、建築面積約4500m²)の規模で建設。建物には、免震構造を採用している。病床数は275床(一般214、地域包括41、緩和20)、診療18科(内、消内、循内、呼内、外、整、リハ、小、皮、産、泌、耳、眼、放、麻、病理、緩和、透析)。
新病院の特徴として、がん治療を強化し、強みであった内視鏡治療分野を拡充して独立した内視鏡センターを整備したほか、化学治療部門において独立した化学療法センターを新設。隣接して15年10月に完成した「広島がん高精度放射線治療センター」(HIPRAC)と連携した治療も行う方針だ。また、広島市東区の中核病院としての役割を果たすべく、地域ニーズの高い人工透析センター(20床)と、緩和ケア病棟(20床)を新設した。
このほか、駅前立地を活かし、これまで外来の一部で行っていた人間ドックなどの健診部門専用のフロアを設置した。さらに、強化するがん治療や人工透析などの通院患者のほか、緩和ケア病棟に入院する患者の家族の来院で利用しやすい病院の実現に配慮した。
病院内のフロア構成において、1階の正面玄関中央に2階へアクセス可能なエスカレーターを配置し、分かりやすい導線を確保している。西側には、総合案内所と広々とした総合受付および医事会計のほか、奥には院内レストランを配置。東側には、手前に外来部門(外、整、緩和、内、循内、呼吸内、消内、透析)を集積しており、各診察室の両側に待合室を配置したほか、診察室の中にもスタッフ専用の通路を配置し、患者とスタッフの導線を区分しスムーズな移動が行えるようになっている。
1階奥には放射線部門と内視鏡センターを配置した。放射線部門において、CT室では、世界最高水準のCT320列(東芝製)を導入し、高水準の画像診断を実施して診断の迅速化を図る。血管造影装置(アンギオ)室では、循環器対応の高機能バイプレーンシステム(シーメンス製)を導入。シーメンス製は中四国初の導入で、画像は3Dからオプションで4Dが可能になっており、今後増加が予想される循環器系疾患の治療を行う。別室には画像診断室も完備した。MRI装置室では、隣接するHIPRACで3テスラのMRIを導入しているため、同医院では1.5テスラを導入した。必要であればHIPRACと連携し、撮影を行う方針だ。
内視鏡センターは、これまでの2室から3室に増床し、リカバリールームは3人から5人への対応が可能となった。年間症例数4500件から7000件を見込んでいる。このほか、1階の東側には救急の導線を確保している。
2階の東側では、1階外来部門の真上に同じように外来部門(産婦、泌、皮、耳、眼、小)を配置したほか、健診センター、生理機能検査、化学療法センターを配置。化学療法センターでは、ベッド3台、椅子5台(うち1台無菌ルーム)を配置したほか、各テレビモニターも完備した。健診センターには独立した受付を設けたほか、1階の内視鏡センターと階段でスムーズな導線を確保しているため、患者が待たずに済むような設計を施している。
一方の西側には、広々としたリハビリテーション室を配置。言語、理学、作業の各療法で活用する新たなリハビリ器具やシミュレーション器具を導入した。また、新たに心臓リハビリテーションを実施するため、心肺を強化する自転車エルゴメーターなども導入。通院でリハビリする患者を想定し機能を充実させた。
リハビリテーション室に隣接して、新たに取り入れた「温熱療法」室を設置。ここでは、がんの温熱療法治療(ハイパーサーミア)を行う、サーモトロン(山本ビニター製)という医療装置を導入。熱に弱いがん細胞だけを死滅させる次世代のがん治療法で、広島市内では唯一の導入となり、放射線治療との併用でがん診療機能を強化する。主に悪性腫瘍や再発などの緩和を目的に使用する方針で、週1回の治療で1日5~6人、1台で最大30~40人(1~2カ月)の利用を想定している。
その奥には人工透析センターを設置。広々とした待合室や、20ベッド(うち感染個室1室)を完備したほか、将来的に5ベッドの拡張余地も持たせている。今後も透析患者は増える見通しで、将来的には夜間の透析も視野に入れている。仕事帰りに透析を行い、JR線で帰宅するという山間部地域からの患者の利用も想定している。
このほか、フロアの一番奥に病院の薬剤部門を集約しており、化学療法センターとも接続しているため、患者の症状やスケジュールに合わせた調合が短時間で行えるメリットがある。
3階は、手術部門、HCU病棟(6床)、検査部門、中央材料室、臨床検査室、医局、会議室、執務室の中央機能を配置。手術室は4室で、うち1室はクリーン度最高水準クラス100のバイオクリーンルームを整備、手術の領域を拡大した。手術台は3台を移管し、1台を新規購入。手術件数は年間1935件(2014年度)で年々増加しており、今後は2000件を見込む。将来的に5室目を整備する拡張余地も設けている。また、4室のうち2室は広い手術室で、将来的にはダヴィンチも導入したいとしている。
4~7階は病棟で、各フロアはEVを中央に西病棟と東病棟に約40床ずつ区分され、各病棟にスタッフステーションを配置。また、中央にデイルームや特殊温浴室があるほか、4階では、日当たりの良い南側に屋上庭園を整備した。病室は機能性と広さを重視し、患者の療養環境を最大限に配慮した設計を実施。また、有料個室(全室シャワー・トイレ完備)を増やした。
4階は、周産期(新生児治療室2床を含む)と女性病棟で、LDR室も1室設けている。5~6階は一般病棟、7階に緩和ケア病棟20床(全室個室)を配置している。緩和ケア病棟では、入浴の移動やトイレの移動がスムーズに行える広々とした特別個室もあり、患者と家族が過ごせる療養環境を整備した。駅に近いため、遠方に住む家族の利便性も追求している。
広島鉄道病院の小野栄治院長は「準備してきたものがようやく完成した。ハード面はこのようにしっかりできたが、ソフト面では、これから職員と力を合わせ、患者さんやその家族が満足できる医療が実現できるか、緊張感を持って取り組みたい。地域の急性期医療を担う病院として、隣接するHIPRACとも連携し、がん医療に対する医療領域を拡大していきたい。HIPRACとの連携では、患者さんがあちらで検査をしたり、こちらで入院したりすることを想定している。今後も連携を深めていきたい」と抱負を述べた。
なお、現病院(延べ約1万8600m²)は解体して駐車場などに整備する予定。新病院建物の基本設計は山下設計、実施設計は清水建設が担当。施工は、清水建設と広成建設のJVが担当した。総事業費は約90億円(建物、医療機器など)。12年度の1日の外来患者実績514人に対し、新病院での外来患者数は1日540人を見込んでいる。
(今村香里記者)