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第161回

ダブル・スコープ(株) 取締役CFO 竹居邦彦氏


積極的な設備投資を実施
高いコスト競争力を実現

2016/3/11

ダブル・スコープ(株) 取締役CFO 竹居邦彦氏
 ダブル・スコープ(株)(東京都品川区大崎5-1-11、Tel.03-5436-7155)は、2005年設立のセパレーターメーカー。そのコストパフォーマンスの高さから、近年リチウムイオン電池(LiB)メーカーでの採用件数を伸ばしており、シェアを拡大させている。そして事業スピードを加速させるための設備投資も積極的に実施している。取締役CFOの竹居邦彦氏に話を伺った。

―― 直近の業績から。
 竹居 15年12月期は、売上高が前期比64.7%増の74億4800万円、営業利益は同5.75倍の19億900万円だった。LG化学、Lishen、A123向けなど主要顧客向けの販売増加に加え、中国ローカルメーカー向けの需要も拡大した。アプリケーション別では、中国や米国を中心に拡大する車載用LiB向けの需要拡大に的確に対応し、市場の成熟化が進む民生用LiB向けでもシェアを拡大することに成功した。

―― 採用が拡大している理由は。
 竹居 LiBメーカーにはコストパフォーマンスの高さを評価していただいている。当社では生産に大型ラインを使用しており、1ラインあたりの生産量は一般的なものに比べ2倍以上で、高い量産効果を生み出している。また当社ではフィルムの延伸に「逐次1軸延伸」という方法を採用しており、フィルムの利用可能な面積を極大化し優れた量産性を実現していることも特徴だ。そのほか、材料や装置、プロセスの改善は常に行っており、コスト競争力を日々高めている。

―― 生産体制は。
 竹居 韓国・梧倉に2工場を保有しており、現在、第1~4号ラインが稼働している。そして設備の増強も積極的に進めており、第5号ラインが8月から、第6~7号ラインが4月から稼働を開始する見通しだ。そして先ごろ第8~9号ラインの増設を決めた。17年内に稼働を開始する予定で、17年末時点の生産能力は15年末に比べ1.7倍に拡大する見込みだ。これらの設備投資に16年12月期は79億円、17年12月期は48億円を投じる方針だ。

―― 16年の方向性は。
 竹居 伸長している車載用LiB向けはもちろんのこと、シェアが拡大している民生用LiB向けでもさらなる拡販を図っていき、16年12月期は売上高100億円、営業利益21億円、グローバルシェア8%以上を目指す。そして20年に15%、26年には20%のシェアを獲得し、グローバルトップのセパレーターメーカーを目指す。

―― 開発面での取り組みについて。
ダブル・スコープのセパレーター製品
ダブル・スコープのセパレーター製品
 竹居 先に述べたように生産能力を拡大し、コスト競争力を高める作業とともに、顧客ニーズや市場変化にあわせた技術開発を適宜行っている。その1つとして、LiBのイオン伝導性を高めるためにセパレーターの薄膜化ニーズが高まっており、現在の出荷製品(膜厚7μm)より薄膜のタイプを開発し、サンプル出荷を行っている。また、現在はLiBメーカーが行っているセラミックコーティング工程を、セパレーターメーカーで手がけてほしいという要望も高まっており、当社でもコーティング工程の内製化を計画している。
 そのほか、リチウムイオンキャパシタ、レドックスフロー電池、燃料電池といった電池製品、淡水化用イオン交換フィルターや人工透析用フィルターなど、当社が持つ独自の高分子フィルム技術をLiB以外の分野に応用するための研究開発も進めている。

―― 今後の方針を。
 竹居 積極的な補助金政策が実施され、世界最大の電気自動車(EV)市場となった中国では、現地LiBメーカーが急速に成長している。また、米カリフォルニア州などで進められているZEV規制をはじめ、先進国を中心に環境規制強化が強化される方向にあり、LiBの需要増につながることは確実だ。そのほか、アジアにおいてEV台数が増加することも予想され、EVや車載用LiBの市場が今後ますます拡大していくだろう。
 そういった市場に対応するため、当社としては強みであるコスト競争力を強化していくことが最も重要なポイントであり、そのための設備投資を今後も積極的に行い、生産プロセスを常に進化させていく。そして市場の拡大にあわせて、業績を毎年30%以上伸ばせるような事業体制を構築していきたいと思う。


(聞き手・浮島哲志記者)
(本紙2016年3月10日号12面 掲載)

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