商業施設新聞
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No.546

「ファミレスVS回転寿司」の新たな潮目到来?


高橋 直也

2016/3/1

 「ファミリー」といえばサザエさんからゴッドファーザーまで様々なものを連想するが、今回取り上げるのは「ファミリーレストラン」だ。日曜の夜、ファミレスの前を通りかかれば一家の団らんを目にする。実際、多くの人がファミレスで家族揃って食事をした経験があるだろう。そんな絆と憩いが漂うファミレス業界で少々変化が起きている。どうやら“再び”回転寿司が立ちはだかっているようだ。

 ファミレス業界は、2010年ごろまで厳しい時代が続いた。不景気、専門店を好む傾向などを背景に、回転寿司などに家族層を奪われていた。その後、「ステーキハンバーグ&サラダバー けん」をはじめとしたハンバーグ、ステーキ+サラダバー、ライスなど食べ放題の新興ファミレスが流行り、業界は少し息を吹き返した。

 ところがこの業態はすぐに頭打ちになる。大手ファミレスを含む多くの企業が、同様の業態を出店して市場が飽和したからだ。ただ、このブームが終わったころに景気が回復し始め、各社は高品質商品に舵を切った。これが成功。一皿2000円程度するステーキや、本格的なオマールエビを使ったメニューなどを発売し、予想以上に売れることもしばしば。大手各社は業績を伸ばした。

 そして現在。先日、ロイヤルホールディングスは15年12月期の決算を発表した。外食事業の柱であるロイヤルホストの売上高および経常利益は若干の前年割れだった。原因は客数減だ。高品質化による単価アップについていけなかった客が一定数いた。

ガストは新型店を出店して若いファミリーを取り込む(写真は既存のガスト三鷹店)
ガストは新型店を出店して若いファミリーを
取り込む(写真は既存のガスト三鷹店)
 すかいらーくも15年12月期の決算を発表した。業績は好調だったが、気になったのはガスト。若いファミリー層を取り込めていないという。では、取り込めなかった層がどこに流れているか。すかいらーくによると、それが回転寿司だという。

 ロイヤルホストの取り逃がした層が回転寿司に流れていることも考えられるだろう。ちなみに不調の続くマクドナルドだが、これまでマクドナルドを使っていた層が回転寿司に流れているという話もある。

 回転寿司の特徴といえば、多くの業態で採用している一皿100円という低価格。4人家族が1人10皿食べたとしても4000円だ。ファミレスならハンバーグ、ライス、スープ、飲み物までつければ一人1500円前後になる。それが4人家族なら6000円。この差は大きい。そして回転寿司店特有のあのBOX席。半個室ともいえる形状は、家族が団らんしながら食事するのにピッタリだ。ファミレスと回転寿司はいつの時代も競争してきたが、新たな潮目を迎えようとしているのかもしれない。ここぞとばかりに回転寿司がファミレスから客を奪いにかかったりするのだろうか。

 一方、ファミレスの出方を見るとロイヤルHDは高品質という強みを引き続き追求する。利用層が限られるのはある程度仕方ないというスタンス。すかいらーくは若いファミリー層を取り込むため新型のガストを春に出店するという。すかいらーくは多くの業態を持ち、幅広い層を囲い込むが、新型ガストで若いファミリー層を獲得できれば業績拡大の弾みとなる。果たしてどんな業態が誕生するか。個人的には「ステーキハンバーグ&サラダバー けん」のような業界に大きな影響を与える店を期待している。
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