商業施設新聞
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No.545

カフェ文化2016


松本 顕介

2016/2/23

 以前、この稿で「サードウェーブ」について触れた。2014年10月ごろで、ブルーボトルコーヒーが日本に上陸する直前だった。サードウェーブのイメージが湧かず、カフェチェーンの役員に尋ねても「客の好みに合わせてハンドドリップで一杯ずつ丁寧に淹れていく――などと言われているが、もうひとつ明確ではない」だった。それからおよそ4カ月後、ブルーボトルコーヒーがやってきた。焙煎機を備え、高い天井にガラス張りの開放感あるスタイリッシュさは目新しかったが、新しい波に乗り切れなかった。

 以来、カフェ業界を巡る動きは目まぐるしい。コンビニコーヒーは各社がこぞって投入し、カップを片手にオフィスへ急ぐ姿は日常だ。そのコンビニは今や10兆円産業にまで上り詰め、大手による再編が激しさを増している。代表例はユニーとファミマの経営統合で、ユニーが展開する「サークルKサンクス」はファミマの屋号に替わるなど、大手がますます巨大化していく。

スターバックス リザーブ ロースタリー&テイスティングルームの店内
スターバックス リザーブ
 ロースタリー&テイスティングルームの店内
巨大な焙煎機が目を引く
巨大な焙煎機が目を引く

 スタバは相変わらず強い。いやさらに強くなった感がある。本紙の調べでは、ついにドトールコーヒーショプを抜き、店舗数でトップに躍り出た。最近では「Neighborhood and coffee」なる地域密着型の新業態を増やしつつある。同業態は都心の感度の高いエリアに出店しており、東京・自由が丘の店舗はいつも満員。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。本社米国シアトルでは14年末に「スターバックス リザーブ ロースタリー&テイスティングルーム」と呼ばれる巨大な焙煎機まで設置した、世界最大の旗艦店をオープンした。昨年、当社主催の米国ポートランドツアーで訪れたが、ちょっとしたテーマパークのようだった。これがいつ日本に来るのか、興味津々だ。

 スタバに続けとばかりに米国系の新ブランドが続々と進出しており、前述のブルーボトルにとどまらず、15年1月に渋谷に1号店を出店した「ゴリラコーヒー」、同年5月に東京・日本橋に開業した「コーヒービーン&ティーリーフ」があり、今年4月にはカリフォルニアから「VERVE COFFEE ROASTERS」が上陸する。

 日本の大手外食チェーンも果敢に攻めている。最近ではファミレス最大手のすかいらーくが乗り込んできた。子会社ニラックスが「むさしの森珈琲」を開発し、昨年3月に横浜に既存の「ガスト」を業態転換し開業した。新規参入ではないがセブン&アイホールディングス傘下のセブンフードシステムズは「白ヤギ珈琲」を商業施設内で展開していたが、5店目は「デニーズ」を転換し12月、東京・世田谷に出店した。ファミレスがカフェに代わっていくかのようだ。

 郊外ロードサイドも元気だ。「コメダ珈琲店」をはじめ、ドトール・日レスの「星乃珈琲店」「支留比亜」「元町珈琲」「珈琲らんぷ」「ミヤマ珈琲」などがロードサイドを賑わしている。
他方、外食チェーンとは対極にある個人経営の「コーヒースタンド」と呼ばれるカフェが東京都心に開業し、街を彩っている。

 サードウェーブは自分の中ではもうひとつ消化しきれていない。ただ、コーヒーが飲めなくても、そこに集うというところをみると、サードウェーブはサードプレイスと同義語なのではと思う今日このごろ。カフェは今や生活インフラといっても過言ではないかもしれない。
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