電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第162回

「自分たち自身が熱くなれば、ユーザーにも思いは伝わる!!」


~スミトロニクスの高野誠司社長が語るEMSサービスの真骨頂~

2015/12/11

 「住友商事が持っているネットワーク力は世界すべてに及んでいる。スミトロニクスは今日で言う技術商社の原型を作ったカンパニーだ。総合商社系唯一のEMS企業として、これからも環境の変化と顧客ニーズに即応していく」

スミトロニクス 社長 高野誠司氏
スミトロニクス 社長 高野誠司氏
 静かな表情ではあるが、心に持つ熱い思いを確かめるように語るこの人は、スミトロニクスの代表取締役社長の高野誠司氏である。高野氏は兵庫県伊丹市出身、父親もまた総合商社に勤務していた。父と同じ道を進むことになるとは思っていなかったという高野氏は、大阪大学法学部を卒業し1985年に住友商事に入社する。
 運輸本部に8年間勤務し、物流の世界を経験した後、93年から住友商事100%出資であるスミトロニクスグループでインドネシア、タイなど14年間のアジア駐在を経て、2011年12月に執行役員営業本部長となり、15年5月にグループのトップに就任するのだ。

 「一般に住友商事の社風は、石橋を叩いても渡らない、というほど慎重姿勢だといわれている。確かに信用を重んじ、確実性を追求する風土は住商のものだろう。しかしながら、変化の激しいエレクトロニクスの世界では、往々にしてスピーディーな決断を迫られる。また組織力、チーム力が何よりも重要になる」(高野社長)

 さて、スミトロニクスは総合商社系で唯一のEMSカンパニーであり、電子機器の開発から調達、ユニットの設計、試作、生産、アッセンブル(実装)まで一貫して受託するEMS事業を展開している。世界1000社以上の電子部品メーカーから、ユーザーが必要とする最適の部品を調達、ユニットを組み立てて納入する電子機器の受託製造サービスがメーンだ。プリント基板の実装(PCBA)を核としたJIT(Just in time)納入を可能にする。在庫管理・製造、品質・出荷管理など高い管理力が問われる工程を一貫して受託し、部品調達の一連の流れを一元管理する最先端のSCM手法を駆使していく。これで生産効率を高め、低コスト生産を実現するのだ。

 「わが社のEMSサービスの強みは、部品調達から物流、生産管理までを一貫して行うことだ。数万点に及ぶ部品を取り扱い、実装するユニット内容の変更にタイムリーに対応する。このために独自のシステムを構築している。いまのところのユーザーは日系が90%、海外が10%であるが、今後は当然のことながら海外が伸びてくる。人員は正社員が約600人で、ワーカーまで入れれば3500人を擁している。いわゆるワンビリオン企業であり、今後年率10%以上の成長を目指していく」(高野社長)

 スミトロニクスはOA機器関連のカバーには定評がある。今後は車載、省エネルギー関連、社会インフラ、医療関連などの新成長分野を強化していくという。また、女性の社員比率は日本だけで言えば約30%であるが、女性部長はまだ1人しかいない。電子部品の調達や交渉には女性が向いていると判断しており、今後は海外拠点同様、女性幹部を多く育成していく考えだ。

 「部下に対して常に言っていることは、自分たち自身が熱くなれ、ということだ。その熱い思いと真摯な姿勢は必ずお客様に伝わる。私自身もタイ駐在時代、台湾系基板メーカーの代理店業務をやっていた若いときには、飛び込みベースでドブ板セールスをやり、トラブルが生じると工場に泊まり込みで対応していた。ある時、納期トラブルのため、生産対応に追われ、通常のトラックでは部品の納品が間に合わないため、自分の車を飛ばして朝一番で工場に届けたことがある。何と女工さんたちは朝までずっとそれを待っていたのだ。自分の車が到着したときに、女工さんたちの大きな拍手が起きた。うれしかった。約束したことをやり遂げることが、いかに大切であるかを思い知った。そしてまた、熱い思いは必ず相手に伝わるのだということを学んだ」(高野社長)


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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