電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第148回

アルプス電気(株) 代表取締役社長 栗山年弘氏


車載・スマホ用途の拡販強化
IoTはゲートウェイ領域に注力

2015/12/4

アルプス電気(株) 代表取締役社長 栗山年弘氏
 電子部品を取り扱うアルプス電気(株)を主軸に、車載情報機器を扱うアルパインと電子デバイス物流を担うアルプス物流を両翼とした事業推進で躍進するアルプスグループ。2015年度4~9月期連結売上高は前年同期比11.8%増の3953億円、営業利益は同64.2%増の320億円を達成。通期では7780億円の売り上げを狙う。戦略市場は売上高の60%以上を占める車載用途と、スマートフォン(スマホ)などモバイル情報端末。IoT時代到来を見据えたアルプス電気の次なる事業戦略を、代表取締役社長の栗山年弘氏に伺った。

―― いよいよ1兆円企業の仲間入りが見えてきた。
 栗山 企業経営にとって、売り上げを伸ばすことは大事。しかし、初めに数値ありきは、必ず歪みを生じる。一歩一歩、着実に階段を上がっていくこと、常に市場の伸びを上回る売上高を達成していくことこそが重要だと考えている。

―― アルパインとアルプス物流の現況は。
 栗山 アルパインのビジネスは自動車メーカーへのOEM供給が主。このため売り上げ規模は、おおむね3年先まで見えている。ここ1~2年は踊り場を迎えるが、それ以降の戦略を構築しているところだ。懸案はスマホとの連携機能拡充。デジタルカメラの市場がスマホに飲み込まれた。その侵食が、今度はカーナビに及ぼうとしている。
 アルプス物流に関しては、グローバル・ネットワーク化による取り扱い物量の拡大、そして国内外の顧客に対しては、提案型の営業を推進していく。

―― アルプス本体の業績牽引役は車載とスマホ。この2大市場の動向について。
 栗山 スマホは中国製が、今夏を境に弱含みで推移し始めた。北米製に関しては、年明け以降の動きがポイントとなる。両スマホを合わせた世界市場の動きがはっきりと見えるのは、例年、調整期にあたる12月~2月ごろ。車載分野はアルパイン製も加えると、全売上高の60%以上を占める当社の主要市場だ。地域別シェアの内訳は、北米、欧州、日本、それぞれで均等である。

―― IoT到来をにらんでの戦略は。
 栗山 IoTのビジネスは、幾層もの階層によって構成される。そして、各階層において、市場が成立する。当社が主戦場とするのは、ノード、ゲートウェイの階層である。当社の注力するヒューマン・マシン・インターフェース、センサー、コネクティビティーのうち、この分野では特にセンサーとコネクティビティーに力を入れていく。また、システムソリューションの階層であるクラウド企業との協業も進めている。
 他方、電子部品は機器の性能や機能を担う内装部品と、もう1つ、各種の操作・入力部を担う外装部品の大きく2つに分けられるが、当社が過去から得意としてきた領域は、外装部品の世界である。車載やその他民生分野での事業においては、その方向性は変わらない。

―― ヘルスケア・医療分野での取り組みは。
 栗山 医療も今後、高齢者を遠方から見守るなど、IoTのニーズが高まっていくこともあるだろう。注目されるロボット市場なども含め、機器の操作や入力を担うヒューマン・マシン・インターフェース、各種情報を検知、取得するセンサー類、そしてクラウドをはじめ、様々な機器と機器とをつなぐコネクティビティーの領域だ。

―― 半導体はどうか。
 栗山 ファブレスの立場でセンサーとASICを組み合わせるなど、モジュールとしての開発を行っている。また、MEMSセンサーと、その延長線上に位置するアクチュエーター事業も強力に推進していく。

―― 今年度の設備投資計画は。
 栗山 連結で上期に197億円、下期は352億円、総計で前年度の314億円を大きく上回る約550億円になる見込みだ。アルプス電気単体だけを見ても、前年度の222億円に対し、今期は倍近い417億円を投資する。投資対象は、新製品の市場立ち上げをにらんでいる。海外のみならず、国内にも多くの金額を投資する。

―― 人材、とりわけ女性の活用は。
 栗山 当社も人材不足への対応を進めている。来春採用予定で新卒200人を内定した。このうち、女性が30%強、海外国籍が10%以上の比率を持つ。この比率は今後、ともに引き上げていく方針である。理系の女性は比較的、志望動機や入社後の目標が明確なことが多く、入社後はエンジニアとしての成長を大いに期待している。

―― 環境への取り組みについて。
 栗山 全社の環境保全中期行動計画を策定し、国内外の各工場では、環境管理責任者を設けて積極的に環境経営を推進している。また、世界のエネルギー問題に貢献すべく、当社製品は開発・設計、材料調達、生産、デリバリーのいずれの段階においても省エネルギー化を徹底追求している。

(聞き手・本紙編集部)
(本紙2015年12月3日号1面 掲載)

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