(株)電通(東京都港区東新橋1-8-1、Tel.03-6216-5111)は、2014年に「電通ロボット推進センター」という社内横断組織を立ち上げ、ロボットに関する様々な支援事業を展開している。今回、その取り組みや今後の方針について、同組織の責任者でコンテンツ局キャラクター&ソフト開発部長でもある阿比留一彦氏と、ロボットプランナーである西嶋頼親氏に話を伺った。
―― センター設立の経緯から。
阿比留 コミュニケーションサービスを提供する当社は、コミュニケーションの高度化の1つのかたちとしてロボットに以前から着目し、様々な取り組みを進めてきた。例えば、12年に発足した世界初のロボット宇宙飛行士「KIROBO」のプロジェクトでは、プロジェクトマネジメントやコミュニケーションデザインなどを担当。ソフトバンクのロボット「Pepper」では、キャタクターや会話エンジンの開発などを行った。そういった実績を積み上げるなかで、ロボットに関する相談が増加してきたことから、ロボットを専門的に取り組む社内横断組織として「電通ロボット推進センター」を14年11月に立ち上げた。
―― センターの事業内容は。
西嶋 大きく分けて、(1)開発領域、(2)エージェンシー領域、(3)コンテンツ領域の3領域を展開している。当センターには、ロボット工学の知見を持つスタッフのほか、メディアのスペシャリスト、アートディレクター、プランナー、キャラクターコンテンツの専門家など幅広い人材を揃えており、コミュニケーション分野での活用を中心としたロボット開発の企業支援を行っているのが(1)である。
阿比留 (2)では、当社が窓口役となってロボットに関する様々な依頼を受けつけ、最適なロボットクリエーターを紹介するなど、ロボットに関する企業や人材のマッチングを行っている。(3)では、ロボットのキャラクターライセンス管理やロボット競技のコンテンツ化などを行っている。
―― ロボット市場は成長が見込まれています。
西嶋 経済産業省によると、ロボット国内市場規模は現在の約1.6兆円から35年には9.7兆円に成長すると予測されており、企業や大学などを中心に開発が活発化している。しかし、一般消費者の手元まで届く製品は決して多くはないのが現状だ。
そこで当センターとしては(1)~(3)のような取り組みを進めることで、ロボットに関するあらゆるサポートを行い、ロボットをビジネスとして確立させ、一般の方にもロボットを日常的に感じていただけるようにすることを事業の根底に据えている。
―― 海外でもロボット開発が活発になっています。
西嶋 現在、海外では巨額の国費が投じられ、軍事用ロボット開発が進んでいる。日本ではそういった用途のロボット開発は行えず、費用も限られることが多い。そのため、今後も日本がロボット分野で存在感を発揮していくためには、独自のアプローチが求められ、当センターとしても様々な提案を行う必要があると考えている。
それと同時に、我々が思っている以上に日本のロボットが持つデザイン性などは海外で評価されている。その独自性をさらに深化させることで日本としてグローバルでも存在感を発揮できると見ており、将来的には海外展開のサポートなども行っていきたいと考えている。
―― センターの方向性について。
阿比留 センター設立から約1年が経過し、大きな可能性を秘めたプロジェクトも出てきている。今後も(1)~(3)の領域を発展・拡大していくことで、企業や人、もしくは企業間をつなぐ橋渡し役としての支援をより強化していきたい。ただ、そのために必要な情報や技術は、当社だけでカバーできるものではなく、今後は様々な分野の方と協業していきたいと考えており、そういった連携にご興味があるような方がいれば、ご一緒できればと考える。
―― 今後の抱負を。
阿比留 ロボットは様々な技術革新により発展してきた。そして、それらはすべて「人にとって役に立つ」という目的のもとに開発されたものでもあった。ロボットは今後もさらに発展していくだろうが、その「人にとって役に立つ」という部分は変えてはいけない部分であり、そういったロボットを数多く生み出すための支援を当社としても「電通ロボット推進センター」を通じて進めていき、ヒトとロボットの共生社会実現に貢献する一翼を担っていければと思う。
(聞き手・浮島哲志記者)
(本紙2015年11月26日号1面 掲載)