電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第155回

佐賀県には面白い環境エネルギー企業がいっぱいあるのだ


~味の素、エクセルシャイン、ミゾタの活躍ぶりは注目~

2015/10/23

佐賀県が生んだ超有名男は大隈重信だ
佐賀県が生んだ超有名男は大隈重信だ
 佐賀県と聞いて読者の方は何を思い浮かべるだろうか。佐賀牛がおいしいとか、神埼のソーメンは絶品とか言う人はかなりの食通であろう。もちろん歴史通であるなら、わが国近代化の原点となった明治維新を推進した薩長土肥の一角となる肥前を思い浮かべるだろう。後に悲運の死を遂げるが、肥前出身の江藤新平は明治政府における最初の法整備を行った人物として高く評価されている。また、早稲田大学出身の人であるなら、総理大臣を2回もやった超有名男の大隈重信のことを考えるだろう。

 筆者の所属する産業タイムズ社が発行する電子デバイス産業新聞では、長期連載で佐賀県の特集を組んだことがある。正直言って実に面白い県であった。武士道の原点とも言うべき葉隠れの国であり、この影響を受けて男子はみな謹厳実直、女子はいまどき珍しい貞女の風をなしている。つまりは純な人たちが多いのだ。最近では福岡からわずか30分という立地条件を生かし、企業立地も相次いでいる。

 さて、少し前のことになるのだが、その取材の折に訪問した3つの会社について感想を述べておきたい。佐賀県は森永乳業の創業者である森永家が勃興したところであり、食の文化についても奥深いものを持っている。

 味の素九州事業所を訪問させていただいたが、歴史の重みを感じる工場であった。周知のように東京帝国大学教授の池田菊苗博士が、1908年に昆布の研究からある種の旨味を発見する。これがかの有名なグルタミン酸であり、味の素はこれをベースに作られたのだ。九州事業所(佐賀市)は1948年に佐賀工場として建設され、1962年には味の素の生産を開始する。敷地は23万m²と広大であり、約350人が従事している。主要生産品目は医薬原料、アルギニン、グルタミン酸、ハイミー、フェニルアラニンなどである。

 トピックスとして挙げられるのは、2014年6月に味の素九州事業所のアミノ酸発酵の工程から発生するバイオマスを活用する技術について、佐賀市との間で共同研究契約を締結したことだ。この両者は、循環型地域社会の構築を目指し、佐賀市下水浄化センターでの排水処理後の汚泥を原料とした肥料製造への活用、さらには下水浄化センターのバイオガス発電への活用に向けての共同研究を行うことになったのだ。

 ミゾタ(佐賀市)は水門を作ることで世間に知られているカンパニーだ。水門に使われるゲートポンプについては全国シェア50%以上を持っている。売り上げは約100億円。社員数は約400人で、農機具の製造で産声を上げたカンパニーであるという。1915年設立であるから、今年創業100年を迎えることになる。

 最近の設備投資では新ポンプ試験用試験場を完成させており、従来1350ミリまでであった口径を1800ミリまで拡大した大型ポンプに対する需要増に応えるものだ。この大型ポンプは今後大活躍すると見られている。最近は非常に多くなったゲリラ豪雨に対応できる。また、東日本大震災など被災地における水防施設としても使える。また同社は平野部でも発電可能なマイクロ水力発電装置も開発している。さらには、水処理技術を活かしてロッカクレイシといわれるきのこからエキスを抽出し、女性用化粧品や歯磨きなども製造している。同社を貫くテーマはやはり環境エネルギーの革新というところにあるのだろう。

 エクセルシャノンはトクヤマの100%子会社であり、東京に本社を置くが、佐賀県唐津に生産拠点を持っている。1976年に創業し、日本初の樹脂サッシの製造販売を開始する。九州工場は西日本の製造拠点として2004年に稼働を開始した。日本の樹脂サッシ普及率は全国レベルでアルミが約60%、アルミ樹脂複合が約30%、普通の樹脂が約10%となっている。エクセルシャノンの樹脂サッシは性能を落とさず保持でき、強度も強く、断熱性も高い。日本は樹脂後進国といわれているが、エクセルシャノンはこれを打開すべく積極的な営業活動を続けている。同社の考える思想は、とにかくエコの追求にあるという。

 味の素のバイオガス発電、ミゾタの大型ポンプやマイクロ水力発電、エクセルシャノンのエコ先進国に向けた樹脂サッシの窓の普及活動など、佐賀県下には環境エネルギーをテーマとする会社がキラキラときらめいていることを知った。佐賀県の人材が優れていることは、佐賀県立産業技術学院の卒業生が100%就職を勝ち取っていることでも良くわかった。こうした優れた人材が、環境エネルギー企業と相まって、佐賀県の明日を創っていくことは間違いないであろう。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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