商業施設新聞
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No.525

奴が来る。3月26日に


高橋 直也

2015/9/29

 高校の修学旅行といえば、夜中に女子の部屋で楽しくオシャベリするのが定石だが、筆者の一番の思い出は新幹線に初めて乗ったことだ。新大阪から乗り、品川まで行った。こう書くとどこの田舎モンだと思われるが、北海道の田舎モンである。北海道には新幹線がない。あるのは在来線と地下鉄と馬車だけだ。

 同じように新幹線に初めて乗るというクラスメートは多かった。処女飛行(運行)にクラスメートともども興奮したものである。在来線と違い、席が広々としていた。車のシートみたいな独特の臭いがした。テンションが上がって車内で騒いでいたので、生まれて初めての富士山を見る機会を逃してしまった。

 そんな北海道民とは縁の遠い新幹線だが、2016年3月26日に新青森駅―新函館北斗駅間が開通し、その後30年度に札幌まで開通する。現在、函館エリアでは色々と開発が進み、地元の札幌でも開発の検討が始まった。商業開発は大変盛り上がるだろう。

 先日、地元の友人の結婚式に出席するため帰省した。式の最中、「新幹線がついに来るなあオイ!」と話を振ってみたが、一様に反応が薄い。「ああ。そうだっけね」くらいの感じだ。肩透かしだった。一番手厳しい意見は「新幹線? 札幌に来るのは遥か先の話でリニアが開業した後だ。そんな前時代的な乗り物が来て盛り上がる意味が分からない」というものだった。

 何てつまらない奴だと言い返したいところだが、確かに課題もある。今回、新幹線が開通するが東京駅―新函館北斗駅間は4時間程度かかるらしい。つまり、飛行機の方が早い。札幌まで開通しても、東京からは大半の人が飛行機を使うだろう。筆者も帰省するときは飛行機を使うと思う。

30年度には札幌駅にも新幹線が開通する
30年度には札幌駅にも新幹線が開通する
 もちろんメリットもある。北海道が注目されて、「行ってみようかな」というきっかけになる。また、北海道と東北が近くなることだ。以前、札幌まで新幹線が開通するのを心待ちにしている人と話したことがあるが、北海道と東北は隣り合っているがアクセスが悪いと言っていた。その人は仕事の関係で、札幌市と仙台市を月に何度も行き来していた。飛行機を使っていたが、空港に行くのが手間だという。便数も多いわけではなく、新幹線が札幌まで開通すれば、仙台との距離が縮まると言っていた。

 筆者は18年も北海道に住んでいたが、東北に行ったのは中学の修学旅行で青森県、秋田県に行ったきり。そのときもかなり移動時間が長かった。調べてみると、今でも札幌駅―新青森駅間は特急を乗り継いでも5時間以上かかる。乗り換えなどによっては6時間近くかかるようだ。筆者が中学生だったのは15年以上前なので、もう少し時間がかかったかもしれない。近くて遠い、それが北海道と東北。それが解消されるのが北海道新幹線の効果の一つだろう。

 函館駅周辺では開発や、観光客の誘致活動が進み、札幌駅周辺では開発が動き出している。いっそ東北の人に向けて施設作り、販促を行ってみるのもアリかもしれない。
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