電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第137回

デクセリアルズ(株) 代表取締役社長 一ノ瀬隆氏


自動車など新領域で市場創出
収益力の源泉は技術力にあり

2015/9/18

デクセリアルズ(株) 代表取締役社長 一ノ瀬隆氏
 デクセリアルズ(株)(東京都品川区大崎1-11-2、Tel.03-5435-3941)は、旧ソニーケミカルにルーツを持つ電子材料メーカーである。3年前にソニーグループから離れ独立、見事短期間での上場にこぎ着けた。営業利益率が2桁に上り、異方性導電膜(ACF)や光学弾性樹脂(SVR/ハイブリッドSVR)などグローバルシェアの高い製品を揃える。「自分たちの手で未来を決める」と力強く語る代表取締役社長の一ノ瀬隆氏に今後の事業戦略を聞いた。

―― 7月29日、東証に新規上場しました。改めて上場の意図を教えて下さい。
 一ノ瀬 3年前から頭の中にあった。ソニーグループから離れることで社員の中にはかなり不安になった人も多かったと思う。しかし、新規上場の目標を掲げることで前向きにやってこられた。自分たちの手で未来を決めることが大事だ。
 また、市場はどんどんグローバル化している。家電などのエレクトロニクス以外の分野に本格参入する意味でも、株式の公開が最適だと思った。

―― ACFやSVRなど業界シェアの高い製品を取り揃えています。
 一ノ瀬 40年弱手がけているACFをはじめ、リチウムイオン電池の2次保護回路素子(SCP)のほか、SVRは07年から市場参入した。これら3製品で売上高の6割を占める。
 当社製品が多く使われるスマートフォン(スマホ)は確かに普及ピッチが鈍ってきたものの、まだまだ成長する。特にハイブリッドSVRは、中国メーカーのスマホ向けの採用拡大に加え、タブレット端末向けでも今後本格採用が見込まれるので、伸びしろはまだまだある。SCPもスマホなどモバイル端末のほか、より大電流対応の電動工具や電動バイク向けなどに採用が始まった。

―― 新規分野への取り組みは。
 一ノ瀬 自動車をはじめ、ライフサイエンス、環境分野などに本格展開する。例えば、自動車用途ではインパネ向け液晶やADAS用カメラモジュール向けなどで、ACFの新たな市場を立ち上げる。光を透過するような特殊なプラスチックフィルムも開発し、治療時の術者の目の保護を目的としたアイシールド材として実用化した。
 実証実験の段階だが、赤外光などの熱線を路面などに反射しないような特殊なフィルムを製品化済みだ。赤道周辺の暑い国でビルなど建造物への採用を働きかけていく。
 我々がすでに開発した製品でも、従来のエレクトロニクスの世界とは異なる分野に適用できないか、あるいは新たな使い方や付加価値が提供できないかを常に探索している。

―― 足元のビジネスの状況はいかがですか。
 一ノ瀬 中国景気などマクロ経済が気になるところだが、エレクトロニクスの業界はほぼ想定の範囲内できている。確かに中国のスマホ市場は一部で減速感が出てきているが、企業によって異なる。一言で言えばまだら模様だ。顧客の要望にいち早く対応し、チャンスを逃さず実績につなげていく。今年度も当初計画どおり増収増益を目指す。

―― 中長期の事業戦略は。
 一ノ瀬 現在、詳細を詰めているところだ。来年のしかるべきときに発表したい。ただ、今後とも海外売上比率は高くなるだろう。今期中には80%にまで拡大する。また、販売開始から3年以内の新製品の売り上げ比率は現在約半分だが、3年後には60%へ引き上げる。戦略投資も大事だ。光学フィルム関連の施設を増強する。市場動向を勘案して、2年間ぐらいかけて実施する。総額24億円程度を計画している。

―― 世界シェアの高い製品を開発できる秘訣は。
 一ノ瀬 当社は、ただ単に材料製品のみを売っているのではない。最適な製造プロセスを確立するためには、顧客の製造現場に入って一緒になって開発することが多々ある。顧客にとって使い勝手の良い材料・製品に仕上げることが使命だ。製造歩留まりを向上するために量産化を支援することも行っている。
 そのためには技術開発力が大事になる。収益力の源泉だと思っている。売上高の7%をこうした研究開発費に充てている。毎年20~30人の新規採用を行っているが、大半はエンジニアを含む技術系人材だ。また、当社の営業スタッフには、技術を理解し顧客と対話できるスキルが重要だ。

(聞き手・本紙編集部)
(本紙2015年9月17日号1面 掲載)

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