商業施設新聞
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No.523

遅れてきた“第4のJR”


岡田 光

2015/9/15

 国鉄がJRとして、6つの地域別の旅客鉄道会社と1つの貨物鉄道会社などに分割、民営化されてから20年以上が過ぎた。この歳月の間に、JR各社はこぞって商業施設の開発を進め、駅ビル、駅ナカ施設、高架下商業施設を相次いで開業した。JR東日本は「ルミネ」「アトレ」といった駅ビルブランドを確立。追随するように、JR西日本は大阪駅にショッピングセンター「ルクア」を開業し、駅ナカ施設のブランドとして「エキマルシェ」も立ち上げた。JR九州はファッションビル「アミュプラザ」を小倉駅、博多駅、長崎駅、鹿児島中央駅、大分駅で次々に展開し、同ビルは熊本駅で開発する構想も進めている。これらの3社に比べ、商業施設の開発にはあまり力を入れてこなかったJR東海が今、少しずつ変わろうとしている。

15年8月にリニューアルオープンした「京都おもてなし小路」
15年8月にリニューアルオープンした
「京都おもてなし小路」
 JR東海のグループ会社は運輸、流通、不動産、レジャー・サービス、その他の5つのカテゴリーに分類され、流通には名古屋駅の百貨店「ジェイアール名古屋タカシマヤ」を運営する(株)ジェイアール東海高島屋や、新幹線および在来線特急の車内販売を手がける(株)ジェイアール東海パッセンジャーズなどが、不動産には名古屋駅の駅ビル「JRセントラルタワーズ」の管理などを行うジェイアールセントラルビル(株)や、東京駅八重洲口に直結したSC「東京駅一番街」を管理・運営する東京ステーション開発(株)などが含まれる。流通はともかくとして、不動産は東京駅、新横浜駅、静岡駅、名古屋駅と、至るところにグループ会社が存在する。中でも大きな売上規模を誇るのが、名古屋駅構内の商業施設や、駅ビル「アスティ」の管理・運営を行っている、名古屋ステーション開発(株)だ。

 同社が「アスティ岐阜」の改装に着手し、リニューアルオープンしたのが2014年4月。次いで、津駅の駅ビル「チャム」を14年7月24日にリニューアルオープンした。チャムには「信州そば処 そじ坊」や「サイゼリヤ」といったチェーン店も多く出店するなど、7店が新規出店し、店舗数は25店となった。さらに、同社は15年5月、名古屋駅において新たなレストランゾーンを開発することも発表した。

寿司好きの筆者がよく足を運ぶ「寿しのむさし」
寿司好きの筆者がよく足を運ぶ「寿しのむさし」
 もちろん、同社だけではない。同じグループ会社で、京都駅や新大阪駅の商業施設の管理・運営などを行うジェイアール東海関西開発(株)も、「アスティ京都」のレストランゾーンを改装し、15年8月8日に「京都おもてなし小路」としてリニューアルオープンした。店舗数は10店と少なめだが、「竈炊き立てごはん土井」「イノダコーヒ」「京町家茶屋 抹茶亭 福寿園」など地元企業が多く出店。京都人であり、かつ寿司好きの筆者は、同ゾーンに「寿しのむさし」が再出店したことに安堵し、開業直後に早速足を運んだ。

 こうしたグループ会社の動きに加え、いよいよ17年4月には「JRゲートタワー」が開業する。大型商業施設「タカシマヤゲートタワーモール」やホテル「名古屋JRゲートタワーホテル」のほか、「ユニクロ」「ジーユー」「ビックカメラ」も出店を予定しており、既存の「JRセントラルタワーズ」とともに、名駅地区の“顔”となることが予想される。折しも、JRゲートタワーが開業する予定の17年4月は、国鉄分割民営化30周年の節目に当たる。遅れてきた英雄、もとい遅れてきた“第4のJR”が新たな旋風を巻き起こしつつある。
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