電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第148回

今や日本はすべて後追い、一番初めに先行するカルチャーがない!!


~健康運動指導士の植森美緒さんが語る言葉はなかなかに鋭いのだ~

2015/9/4

健康運動指導士 植森美緒さん
健康運動指導士 植森美緒さん
 「今や男性も女性もお腹の締まりを気にする時代となっています。特にバリバリの企業戦士である人たちが、お腹のふくらみをコンプレックスと思っています。しかし、スポーツクラブでいくら筋肉を鍛えても、なかなか効果は上がりません。簡単に言えば、筋トレ=ダイエットではないからです」

 こう語るのは健康運動指導士としてかなり知られる植森美緒さんである。彼女は企業やカルチャースクールなどのダイエットセミナーで絶大な支持を集めるカリスマ的存在だ。著書は『美へそダイエット』『30秒ドローイン!腹を凹ます最強メソッド』『確実にやせる!計算いらずのカロリーブック』など多数ある。筆者は『腹だけ痩せる技術』(メディアファクトリー新書)という本をいただいたが、何と22万部も売れていることに驚かされた。植森さんの生み出した方法論である体型リセットの「植森式ドローイン」がいかに受けているかの証左なのであろう。

 植森さんは埼玉県草加出身、お父さんは貿易会社の社長であり、3姉妹の真ん中に生まれた。しかし、かなり早い時期に横浜に移ってきており、実質的には横浜が故郷であるという。横浜翠嵐高校を出て成城学園短大に進み、日本石油に入社、営業アシスタントの仕事に従事する。このころチアガールをやり始めたが、これで少し痩せることができて舞い上がる。「運動することを仕事にすれば、健康的にやせられて一石二鳥!」というイージーな考えだった。まさか一生を貫く仕事になるとは夢にも思わなかったという。

 「その後スポーツクラブの会社に入り3年半従事し、様々な勉強の時を過ごしました。しかし、これまで常識と言われていたスポーツマニュアルは間違っているのではないか、という疑問が生じ始めたのです。たとえば従来の腹筋運動は、お腹のしまり、やせることには効果的とは言えないと気づきました。短距離ランナーと長距離ランナーをみてもわかるように、どのように鍛えるかで体型は変わります。また、運動と食事では具体的なダイエット効果が違うことも知られていません。『知らない』せいで、ダイエットがうまくいかないだけではなく、健康を害してしまう人も珍しくないのです」(植森さん)
 役に立つ情報をもっと多くの人に知ってもらいたい。そんな思いで、独立して健康運動指導士としての仕事を始めることになる。ビジネスマンを対象とした企業や健康保険組合での健康指導などをスタートするのだ。

 後に有名になる「植森式ドローイン」のきっかけは自身の腰痛体験であったという。がんばって運動しすぎて、椎間板ヘルニアになってしまうのだが、ある時、腰痛用コルセットのかわりにお腹をへこませてしめつけておくことを思いつく。そうしたら、腰痛が楽になっただけでなく、お腹がほっそりしたという。以来、20年以上、ウエスト58cmを維持しているのだそうだ。

 「私が推奨する動きは背すじを伸ばしてお腹を凹ませる、です。これがお腹を細くする。続けることでお腹から脂肪を落とす方法として最高の効果を上げると思います。わざわざ行う筋肉トレーニングや食事制限には限界があります。無理なく部分やせするのは実にシンプルだ、ということを分かっていただきたいです」(植森さん)

 筆者は植森式メソッドでおっぱいは大きくできないか、と聞いたところ、それはまったく無理といわれた。固くてしまったおっぱいなら可能ですけど、と冷たくいなされた。「じゃ、シリコンを入れるしかないのね」といったら、ニコニコ笑って彼女はうなずいたのだった。ちなみに、ヒップのスタイルを良くすることは案外簡単にできるそうだ。良い姿勢を意識して歩けば、スタイルは必ず良くなるという。

 さて、植森さんのファッションや映画の好み、恋愛観についても伺ってみた。
 「白、グレー、黒などの単色系が好きです。ただ人の見えないところでは、ピンクや紫の鮮やかな色のウエアが好きです。何回も見た映画は、ニューシネマパラダイスとアンジェラです。恋愛観を一言でいうのは難しいけれど、わがままの相互理解ができる関係が一番重要かと思います」(植森さん)

 ところで、植森さんによれば、植森式ドローインは確かに効果はあるものの、研究論文としての立証はされておらず、これを運動の研究者に提示してもほとんど関心を持たれないという。運動学の世界は米国が先行しており、日本は常に後追いの連続で、創造的な仕事が少ないともいう。

 「確かに日本人は真面目で素直です。しかし、現代にあってはあまりにマニュアル人間が多すぎると感じています。世間的な常識やこれまでの理論を疑うという気風に乏しいのです。世界で一番初めのものを発見、開発する、ということに命を賭ける企業人スピリッツは失われつつあるように思われます。それはとてもさみしいことです」(植森さん)

 そう語る彼女の悲しげな目線を視ていた時に、ああ、どこの業界にあっても世界でただ1つのものを作りフロンティアランナーになる、という気風が失われていきつつあるのは本当なのだと思い定めた。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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