米国のジャーナリスト筋はアップルのスマートフォン(スマホ)最新製品となるiPhone6Sの発表イベントは9月9日でほぼ確実との観測を強めているようだ。9月9日というのは、昨年において「iPhone6/6Plus」「Apple Watch」を発表した日である。これにちなんで今年も9月9日にiPhone6Sをアナウンスし、世界にインパクトを与えようとしている、というのが観測筋の見方なのだ。
それにしても、iPhoneのすさまじい出荷数には驚かされる。2014年の出荷台数は約2億台。2007年にスティーブ・ジョブスが世に送り出してからの累計が約6億6500万台。驚くべきは過去4年間での出荷台数が約5億7000万台であり、ほとんどがこの4年間に1億台レベルで売れてきた。
ちなみに、サムスンはハイエンドはアップルにやられ、ミドルレンジは中国勢にやられ、ボロボロ。ギャラクシーS6は2015年通年で5000万台の販売を予定するが、中国のシャオミー、レノボ、ファーウェイの3社はともに1億台以上売り上げることを宣言しており、苦戦が予想されるのだ。
ところで、IDCによれば2015年1~3月の中国のスマホ出荷台数は6年ぶりのマイナスに沈んだ。前年同期比4.3%減の9980万台にとどまる。4~6月もよくない。普及率は9割に達し、買い替え需要が一巡した。アップルがシェアを伸ばす一方、サムスンは中国の市場シェアが9.7%となり1年前から半減した。ちなみに、現状で中国市場でトップに立つのはシェア14.7%をもつアップルであり、前年同期は8.7%であったから、ここにきて一気に巻き返し、中国でも覇権を握り始めた。
日本国内においてもアップル旋風は吹き荒れており、特に女の子はギャラクシーからアップルに乗り換えるケースが続出している。この理由は簡単なのだ。サクサクとスピーディーに処理する能力の高さもさることながら、何といっても消費電力に非常に優れている。筆者はアナログ人間であるから、iPhone6Plusを使っているものの、そんなに雨あられのメールのやり取りや、LINEなどは一切やらない。気がついてみれば3~4日間充電せずに使っている。
ところで、汗ばむ季節の電車の中はいやなものだ。むさくるしく腋臭のにおう男が寄ってくれば、なおさら不快感が募る。きれいなお姉様がシャネルの匂いをさせて寄ってくれば、うれしいのでこちらもつい近づいてしまう。そうした混み合う電車の中で女子高生たちが声高にこう語っていた。
「カレシをつなぎとめるのにィ10分おきにメールを送りつけるのよ。たいしたことは言ってないわ。ラブラブだよーんとか、今度会ったらチューしてね、みたいなことをひたすら送りつけちゃう。ギャラクシーなら電池が半日も持たない。iPhoneはすごく長く持つから、やっぱり手放せないのよ」
それはさておき、iPhone6Sで注目されることは、まずプロセッサーのファンドリーがどこかということだ。5SのプロセッサーA7は28nmで全量サムスンがファンドリーをとった。iPhone6/6PlusはA8で20nm、こちらはTSMCが全量受注した。
「問題のiPhone6Sについては、14nmから16nmのA9が使われるが、今のところサムスンが7割を受注し、TSMCが3割程度と聞いている。もっとも同時に発表されるiPadの新シリーズまで入れれば、サムスンとTSMCのファンドリー受注量はほぼ半々とみている人も多い」
こう語るのは、電子デバイス産業新聞の稲葉副編集長である。彼によれば、6SはDRAMがこれまでの1GBから一気に2GBに大容量化されることが大きいのではないかとも言っている。また、感圧タッチセンサーや高速・省電力な無線デバイスが多く搭載される見込みであるとも言う。
「サムスンはギャラクシーで一敗地にまみれており、S6も期待以上には売れていない。ギャラクシーの増収がサムスンの原動力であっただけに、こうした状態はいわばサムスンクライシスを迎えたことになる。しかしながら、サムスンを救ってくれるのはやはり半導体なのだ。iPhone6Sの2GBのDRAMは超微細加工であるために、サムスンが全量受注するとも言われている。これで同社が息を吹き返すことは確実だ」(稲葉副編集長)
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。