(株)三社電機製作所(大阪市東淀川区西淡路3-1-56、Tel.06-6321-0321)は、市場が拡大するパワーエレクトロニクス分野において必要不可欠な電力制御とパワー半導体の技術を持つ業界トップクラスのメーカーだ。直近ではSiC関連の取り組みも加速させている。取締役専務執行役員の荒井亨氏に半導体事業の話を伺った。
―― 貴社の半導体事業の動向から。
荒井 2014年度(15年3月期)における半導体事業は、全体の7割強を占めるパワーモジュール製品の需要が堅調であったことに加え、生産性の改善や円安も重なり、売上高は前年度比10.5%増の70億3900万円、営業利益は同約2.7倍の9億4700万円と好調だった。
海外市場での伸びが目立ち、海外売上高が国内売上高を上回った。特に中国で商用エアコン向けが伸びたほか、北米で溶接機や切断機などの産業用機器向けなども伸長。国内市場もロボット関連企業での販売が増加して堅調だった。機器の小型化に伴い、搭載するモジュールについても小型化・薄型化へのニーズが高まっており、トランスファーモールド製品の需要が増加している。
―― 開発面での取り組みについて。
荒井 パナソニックと共同で開発した業界最小(94×29.8×14mm)のSiCパワーモジュールを3月に発表した。SiCトランジスタはパナソニック、モジュール化は当社が担当し、サンプル供給を一部開始している。
モジュール化の部分では「テクノブロック」という独自技術を活用し、はんだを用いた接合金属でトランジスタを挟み込み、SiCチップとモジュールの入出力端子を直接接続している。これによりワイヤーボンディングが不要となり、従来法の2分の1の低背化と優れた長期信頼性を実現している。
―― 生産体制は。
荒井 半導体事業の生産は岡山県奈義町の拠点で行っている。岡山工場はA~E棟で構成され、うちA~D棟が生産関連の施設で、現在A~B棟で前工程、C~D棟で後工程を行っている。設備投資として14年度は更新・メンテナンスに加え、後工程での自動化投資などを実施し、半導体事業全体では3.5億円の投資を行った。
15年度の設備投資額はほぼ横ばいを予定している。既存設備の更新・メンテナンスのほか、A棟の前工程機能をB棟(5インチ月産4万枚)に集約することも計画しており、生産の効率化・合理化をより進めていきたいと考えている。
―― 伸長している海外への対応は。
荒井 当社では後工程の一部を中国の協力会社に委託しており、中国向けの製品は中国で生産する「地産地消」の体制を構築している。現在、後工程の約3割を協力会社に委託しており、海外におけるパワーエレクトロニクス市場の伸びに合わせ、今後、委託比率を上げていき、よりスピーディーな対応を目指す。
―― 今年度の方針を。
荒井 15年度の半導体事業は売上高が70億円、営業利益は8億円を計画している。国内市場は今後ロボット向けなどの伸びが期待できるが、今年度のみで見ると、市場は少し落ちついている。海外市場は中国のエアコン向けなどを中心に引き続き堅調に推移すると見ている。製品では産業用パワーモジュールを中心に拡販を図りながら、まだ本格化には時間を要するが、注力しているSiC製品を次の柱となるようにしっかり育てていきたいと思う。
(聞き手・本紙編集部)
(本紙2015年7月30日号3面 掲載)