次世代パワー半導体を巡る戦いに多くの注目が集まっている。これまでのピュアシリコンのほかに、SiC、GaN、酸化ガリウムなどの化合物系の採用が少しずつ広がっているのだ。この中ではSiCが圧倒的であり、9割を占める主力デバイスとなっている。
しかしながら、GaNパワー半導体は高速スイッチングが可能であり、電源回路を小型化できる点が最大メリットとなっている。このため、サーバー電源、産業用スイッチング電源、さらには自動車などの分野で活躍するとみられているのだ。とりわけ、AIシステムが進むことによってGaNの採用は増えるわけであるからして、急上昇していくことは間違いないだろう。
GaNは欧米系企業も強化(写真はオンセミのGaNデバイスウエハー)
2025年のGaNパワーデバイス市場は約600億円になっており、企業別で見れば1位は中国のInnoscienceがシェア31%を押えている。2位はドイツのInfineonでありシェアは16%、3位は米国のPower Integrationsでありシェアは14%。現在は、Innoscienceが強いのであるが、Infineonが急速にシェアを拡大しているという情勢である。
さて、重要なことは日本国内の企業である。まずは、ルネサス エレクトロニクスがGaNパワー半導体強化に動いている。次々と新製品投入に動いており、生産体制も現状の6インチウエハーから8インチウエハーの生産に切り替えていく方向だ。27年からは8インチウエハーによる650V耐圧のGaN on siliconパワー半導体の製造を開始する予定である。また、将来的には甲府工場での300mmウエハー(12インチ)生産も視野に入れている。
サンケン電気は、独自のGaNエピタキシャル技術を保有するパウデック(栃木県小山市)を買収し、GaNデバイス事業化を加速していくものとみられている。その他の日本勢もそれぞれにGaNパワー半導体には取り組んでいるが、海外勢を追撃する体制をもっと見せてほしいものだと思う。このままでは、SiCにおいてもGaNにおいても遅れを取るばかりであり、思い切った設備投資を実行してもらいたい。
そのために必要なことは、国内パワー半導体メーカーの事業再編を進めることが一番良いことであろう。周知のように、三菱電機のパワー半導体、東芝デバイス、ロームの3社がパワー半導体事業を統合するという動きを見せているが、ここにきては全く進展している兆しがないのだ。
ところで、これまでのところはピュアシリコンによるパワー半導体が圧倒的に多い。世界のパワー半導体市場は、25年で3兆6000億円程度とみられるが、このうちシリコンは3兆円を占めており、圧倒的な強さを見せている。何と言っても、使いやすさ、そしてコストの安さがものを言っているのだ。次世代パワーではSiCが4600億円、GaNが600億円、そしてわずかに酸化ガリウムがあるという状況なのである。
酸化ガリウムパワー半導体については、京都のFLOSFIAが大いに期待できると見ている。同社は、Ga203使用のパワー半導体の社会実装を目指している。8インチへの大口径化を次の戦略に据えている。サファイア基板の採用で、SiC基板と比べ最大50分の1という低コストが売り物であり、日本発のパワー半導体ベンチャーとしての夢が叶うことを祈っている。
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 執行役会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。