8月中旬に熊本を取材サーキットしていたのであるが、7月28日に起きた地震は、2016年の熊本地震と比べれば被害は抑えられていた。あの地震はかなりの揺れがあって、ソニーセミコンの本社工場は大きな被害を受けて、社員総出で復旧にあたっていたことをよく覚えている。しかして、今回の熊本地震は揺れも以前ほどではなく、鹿児島寄りの南部地区が震源だった。
筆者はどういうわけか、今回の地震の時に同じ九州の佐賀県にいたが、寝ている時に揺れを感じて起きてしまった。ちなみに、前回の熊本地震の時にも同じ九州の鹿児島にいて凄まじい揺れを経験し、スマホからの大きな警報音にビックリしてしまったのだ。
震源と言われる八代では、かなりの被害があったと思い、筆者が親しくする櫻井精技の社長に電話して状況を聞いた。建設したばかりの新工場に被害があり、落ち込んでおられたが、「頑張ってくださいね!」とお見舞いの言葉を申し上げた次第である。ただ、今回の地震については熊本県北部の方はあまり影響を受けなかった。TSMCやソニーの熊本工場は、少しだけ影響は受けたものの、操業にはあまり問題はなかったという。
創業50年を超えるルネサス熊本工場は被災後7日で復旧し、8月4日には稼働を再開した。同工場は、熊本の半導体工場の中でも最も震源地に近かったが、16年の熊本地震で得た教訓を生かして、スピーディーに復旧した。良かったのは、クリーンルームに大きな影響がなかったことである。
それはともかく、ソニーセミコンに関することも多くヒアリングできた。製造工程での水使用量の削減や再利用を推進しているのだ。熊本TECでは、03年から水が浸透しやすい白川中流域の地質の特性を生かして、川から田畑に水を引き、農地に水を張り、地下に水を還すことに取り組んでいる。これは、日本企業として初めての取り組みだったという。
一方、ソニーセミコンは今後のCMOSイメージセンサーの量産に向けて、新たな作戦に出てきた。同社と台湾TSMCは熊本県合志市に合弁会社を設立し、29年からスマートフォン向け画像センサーを量産することを決めたのである。ソニーの設計・開発力とTSMCの先端生産技術を組み合わせ、次世代画像センサーを開発・生産する中核拠点にしたい考えであるという。
合志市に立ち上がったソニーの新工場の中に、開発機能と生産ラインを整備する。ソニーは、現金出資や会社分割による資産移管を通じて約4650億円、TSMCは現金出資で約2820億円を段階的に拠出する。この量産に向けては、日本政府の手厚い支援を受けることになっている。
日本の半導体生産は、シリコンアイランドといわれる九州が50%を担っている。そして最大の集積エリアは熊本県下なのである。熊本をめぐる話題には事欠かない。例えば、TSMCが工場を置く熊本県菊陽町の26年度の税収はこれまでの2倍の147億円になり、とんでもない経済効果を受けている。日本全エリアの各都道府県は、熊本の例にならって半導体関連産業の誘致に取り組み、その経済効果に期待する作戦に出てくることだろう。
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 執行役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。