商業施設新聞
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No.1056

さらばシネコン1号


松本顕介

2026/5/19

 かつて映画館は都心や繁華街の立地が常で、わざわざ出かける感が強かった。それがシネコンの登場で、映画をわざわざ観に行くというものから、気軽に観るものにスタイルが変わったと思う。1館1スクリーンから、1館で数スクリーンを擁すシネコンは鑑賞する選択肢を広げ、一緒に行っても異なる作品が観られるというスタイルが生まれた。さらには多くのシネコンはSCに併設され、とりわけ郊外型SCであれば、車でさっと行ってSCの大型駐車場に駐車し、駐車代は映画鑑賞料金で相殺できる。この利便性も手伝ってシネコンは飛躍的に拡大した。

 一般社団法人日本映画製作者連盟によると、全国のスクリーン数は、2025年12月末現在で3697スクリーン。そのうちシネコンのスクリーン数は3305、一般館は392だから、9割近くがシネコンだ。最近では、去る3月28日に開業した「大井町トラックス」に最新のシネコンが導入されている。シネコンに限らず映画館はデジタルの進展で音響や映像技術が飛躍的に向上してきた。さらに風などでさらに五感を刺激する仕掛けも誕生した。映画館はあの手この手で客単価を上げる施策を行っているが、音響や映像技術は行きつくところまで行ったからか、あとはいかに快適に鑑賞し、満足度を高めてもらうかに腐心し、近年では豪華なプレミアムシートが増えている。

 一方で、かつて映画は、年末年始、春休み、ゴールデンウィーク、夏休みといった季節の節目には注目映画が封切られ、TVCMや宣伝ポスターが街を彩り、わくわくした。さらには映画館では最新映画の予告編がこれでもかといわんばかりに何本も見せられ、知り合いに「◯◯の予告編観たぜ」とさりげなく自慢したものだった。

5月17日で閉館したイオン海老名ショッピングセンター
5月17日で閉館したイオン海老名ショッピングセンター
 だが、最近は映画館でスポーツや舞台、コンサート、アニメなど様々なジャンルのコンテンツを、大画面と豪華な音響で、たくさんのファンと一緒に時間を共有するイベント、ODS(非映画コンテンツ)が盛んだ。かねて映画館は稼働率向上が一つの課題で、当初ODSは隙間を埋める存在だったが、今日はでその存在感が増している。さらには、ネットフリックスやプライム・ビデオなどがクオリティの高いオリジナル映画を配信しており、映画館で上映しない作品も多い。そのあおりを受けてか、映画の配給が先細りしたように思うのは筆者だけか。

 そんな折、日本のシネコン第1号とされ、1993年に開業した「イオンシネマ海老名(開業当時はワーナー・マイカル・シネマズ海老名)」(神奈川県海老名市)が5月17日に閉館した。出店先のイオン海老名ショッピングセンターが老朽化のために建て替えることが決まり、これに伴い閉店したもの。シネコン33年の歴史のフィナーレを飾る作品に選んだのは『スター・ウォーズシリーズ』だ。本編全9作品に加え、スピンオフ2作品の計11作品を4月24日(金)から1日2本のペースで上映した。筆者は全作品を観るのだと静かな闘志を燃やしていたが、思いのほかGWのスケジュール調整がままならず、結局GW前に見た『エピソード3 シスの復讐』とスピンオフ作品の『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の2作品にとどまった。“スター・ウォーズの日”とされる5月4日に作品を観ることができなかったのも痛かった。ちなみに劇場には長年の別れを惜しんでか、はたまたスター・ウォーズフリークか、たくさんのファンが詰めかけたこともあり、イオンシネマでは当初5月7日に閉館する予定を5月17日まで延長した。そして上映最後の作品に選んだのは『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』だった。何とも意味深である。是非とも帰還して欲しい。
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