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鹿児島市の相良病院(下)、世界最高水準の女性医療の新病院建設を計画


 

2015/6/9

相良吉昭氏
相良吉昭氏
 (社医)博愛会 相良病院(相良吉昭理事長、鹿児島市松原町3-31、Tel.099-224-1811=経営企画部企画課)と、シーメンス・ジャパン(株)(織畠潤一代表取締役社長兼CEO、東京都品川区大崎1-11-1、Tel.03-3493-7630)は4月18日、最先端の乳がん医療を提供する新病院建設に伴い、パートナーシップの基本協定を締結し、5月14日に共同記者発表会を行った。共同記者発表会では、シーメンス・ジャパン(株)の執行役員でヘルスケア イメージング&セラピー事業本部の中部・西日本営業本部長の渡邉隆史氏によるパートナーシップ契約締結の概要説明に続いて、博愛会理事長の相良吉昭氏が「相良病院の概要ならびに今後目指す女性医療」の講演を行った。

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◆鹿児島市内4施設で診断から緩和ケアまで対応
 博愛会の理念は「共に存り、共に歩む」、基本方針として「優れた専門性と豊かな創造性をもって最善の医療を提供する」、「地域の期待に応えることを使命とし、その実現を我々の誇りとする」、「我々の存在は社会に対する責任であり、高い倫理をもって許される」を掲げている。
 博愛会は、鹿児島市内で相良病院(乳がん手術・再発外来、外来化学療法、緩和ケア、一般56床・PCU 24床)、さがらパース通りクリニック(乳がん画像検査、乳がん放射線治療、人間ドックセンター、放射線16床、RI 2床)、相良病院附属ブレストセンター(乳腺科専門外来、初診外来、乳がん検診センター、NPOリボンズハウス)、さがら女性クリニック(女性専門外来、甲状腺科、婦人科、女性泌尿器科、女性内科)を運営している。ブレストセンターには、乳がん医療の専門施設の開設を計画する大学病院をはじめとする医療機関が全国から見学に訪れるという。
 その歴史は、1946年の相良病院開設に始まり、73年に九州初となるマンモグラフィ導入、85年に乳がん体験者の会設立、97年に鹿児島県初の緩和ケア病棟設置、2002年に特別医療法人移行、03年に相良病院附属ブレストセンター開設、05年にマンモグラフィ、超音波検診車導入、07年にさがらパース通りクリニックの開設と放射線治療開始、厚生労働省マンモグラフィ検診遠隔診断支援モデル事業による読影施設認定(全国で7施設のみ)、08年にリンパ浮腫外来・遺伝相談外来開設、09年にへき地医療支援として上甑島診療所へ医師派遣開始、11年に社会医療法人移行、12年にさがら女性クリニック開設、13年には離島での乳腺特別外来開始、遺伝性乳がん卵巣がんリスク軽減予防切除術承認、こどものケア(CLIMBプログラム)開始と、女性医療の先進的な取り組みを続けている。

◆乳がん患者の子供のメンタル支援も実施
 CLIMBの活動は、小学生の子供がいると予測される乳がん患者がかなり多くいることから、その子供たちの不安を和らげたり、病気や治療の理解を深めたり、家族とのコミュニケーションの手助けをする目的で様々なプログラムが組まれており、海外は67施設、国内では相良病院を含めて8施設のみが実施している。

◆離島・へき地に医師や乳がん健診バス
 離島・へき地への高度医療支援活動では、乳腺特別外来の医師を甑島(長浜・青瀬診療所)、霧島(霧島医師会医療センター)、奄美大島(名瀬徳洲会病院)、徳之島(宮上病院)、沖永良部島(朝戸医院)に派遣し、また、与論島、屋久島、瀬戸内には集団検診後の乳腺科医師を派遣するほか、離島での乳がん検診バスの巡回活動を続けている。
 相良氏は、「強く感じたことは、乳がんは決して特別なことではないということ。私の背負わされたリュックの中身がたまたま乳がんだっただけ。みんな何かの悲しみの入ったリュックを背負いながら生と死のもろい境界線の上で日常生活を送っている。『乳がんはその人の悲しみの1つ』」という患者の思いを紹介しながら、患者の「生きる」を支える活動として、乳がん集中講座の開講、啓発講演イベント、体験者と協働したサポートセンター、診断時からの緩和ケア、乳がん治療ケアノートによる記録、さらには、乳がんになると3人に1人が仕事をやめるが、ハローワークとの就労支援により、治療と仕事の両立について相談できる体制整備の取り組みなどを紹介した。

◆全国初の特定領域がん診療連携拠点病院
 鹿児島県内での乳腺悪性腫瘍手術などの治療実績(13年)は、相良病院が639件と断トツで、2位の鹿児島大学病院の43件を大きく引き離し、相良病院のシェアは85%、手術なしの診療は830件でシェアは72%。このほか、高度な集学的治療や緩和ケアを提供しており、5大がん以外の1つの分野に限定した「特定領域がん診療連携拠点病院」として、全国初で唯一(15年5月時点)14年8月に指定された。

◆ブレストピアと統合で全国2位の乳がん手術例
 4月には、医療法人ブレストピア(宮崎県)と業務提携を結び、「さがらブレストピアヘルスケアグループ」を設立した。相良氏は、「実質の経営統合を目指すもので、現在は医療法人と社会医療法人の統合はまだできないものの、国の制度が改定されれば統合が可能となり、その第1号事例を目指している」と説明した。
 乳がん手術症例数(読売新聞、14年9月7日付)は、がん研有明病院の1009件、聖路加国際病院の909件、聖マリアンナ医科大学病院の709件に次いで、616件の相良病院が4位、医療法人ブレストピアのなんば病院が386件であるため、さがらブレストピアヘルスケアグループ全体では1002例、全国2位となる。

◆世界最高水準の女性医療の新病院建設を計画
新病院の完成予想図
新病院の完成予想図
 新病院に向けて策定したマスタープラン(14年4月~20年3月)では、(1)女性のためのがん拠点病院として、乳がん診療連携拠点病院としての機能充実、甲状腺・婦人科のがん医療への取り組み、女性のための診療科の新設、健診・予防活動の拡充、研究・教育の促進を図る。また、(2)アジアへの貢献として、女性医療のロールモデルを確立し、アジアNo.1の乳がん専門病院としてのブランド確立、研修受け入れ、メディカルツーリズムへの参入を図り、さらに、(3)地域連携と街づくりでは、医療連携の強化、緩和ケアセンターの充実、へき地医療の促進、人に優しい医療環境の提供、街づくりの創出を目指す。

◆女性医療のロールモデル確立し世界に発信
 相良病院とシーメンスのコラボは、最新の医療機器の提供、病院建設・運営ノウハウの共有、シーメンスネットワークによる認知度と企業価値の向上、診療圏の拡大による幅広いニーズへの対応力向上(より多くの患者の支援が可能となる)、最先端の女性医療を提供する病院のショールームとして活用、女性医療におけるシーメンスブランドの確立、共同研究を通じた次世代装置の開発、がん患者支援(CSR)活動の促進を達成し、日本から世界へ女性医療のモデルケースを発信する。
 新病院は、相良病院の隣接地を使い、10階建て(相良病院新棟)と7階建て(新ブレストセンター・新女性クリニック)の2棟構成で建設し、総延べ床面積1万2000m²の規模となる。病床は80床。16年4月に両棟の建設に着工し、新ブレストセンター・新女性クリニックが17年10月にオープン、同年12月に相良病院新棟がオープンする。その後、既存建物の解体、プロムナード整備などを行い、18年8月にグランドオープンとなる。一連の工事が完了すると、博愛会の有する施設の総面積は1万7600m²となる。
 相良氏は、「今回の事業は、相良病院の建て替えと分散する博愛会の施設を統合するもので、新病院完成後の病院以外の3施設は別の機能を持つことになる。『最大から最適化』であり、また、少子高齢化の進展で『病院といえども、他職種とコラボしないと生き残れない』と考え、その1つが医療機器の企業との提携である。新病院では、『MR-PET』を実現したいと考えており、最先端の機器を用いてロールモデルを確立し、日本から世界に発信できると思っている」と抱負を述べた。
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