電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第135回

「グローバルに強い若き人材を育成しなければ何も始まらない!!」


~日本半導体商社協会の大西利樹会長が示唆するもの~

2015/6/5

DAFS会長 大西利樹氏
DAFS会長 大西利樹氏
 年明けの1月23日のことである。一般社団法人に衣替えした日本半導体商社協会(DAFS)(東京都渋谷区代々木1-19-12、Tel.03-5350-6860)は、恒例の新年名刺交換会を明治記念館にて開催した。日本を代表する多くの商社のメンバーが押しかけ、会場はいつもの賑わいを見せていた。しかして、DAFSの大西利樹会長が年頭挨拶を始めると、かなり静かになり、皆その言葉に打たれていた。

 「半導体商社業界を取り巻く情勢はかなり厳しいものだ。主要顧客が海外市場に流れており、国内取引は大きく減っている。こうした情勢下では、若きグローバル人材の育成が何よりも急がれるのだ。そしてまた、自主的創造性のある若者たちがもっと前線に出てこなければ我々の明日はない」

 そうした主旨の発言に対し、かなり多くの人が頷いていた。車載向けや産業機器向けがかなり牽引しているとはいえ、デジカメや国内スマホ向けに注力していた関連商社は販売減少の直撃弾を受け、業績は低迷しているのだ。また、大型事業再編もさらに加速している。何しろ、売上高トップのマクニカと中堅の富士エレクトロニクスの統合会社が4月からスタートし、国内半導体商社の大型再編事業が本格的に始まるわけであり、各社ともうかうかはしていられないのだ。

 電子デバイス産業新聞の調べによれば、国内半導体主要20社の2014年度売上高(見込み)は、前年度比2.8%増の2兆5968億円であり、一応は3%弱の伸びを確保したようだ。しかし、主力を占める半導体はマイナス約9%と厳しい情勢にあり、一般電子部品がこれをカバーするかたちとなっている。

 「確かに、国内市場は年々厳しさを増している。しかし一方で、日産自動車やトヨタ、ホンダなどの自動車メーカーの国内生産回帰という現象もある。アベノミクス成長戦略がうたっている国内への工場建設重視という政府の姿勢を各企業とも徐々に意識し始めた。こうした現象から国内市場は少しは戻しつつある。しかし今後はやはり、海外市場での事業拡大が成功するかどうかにかかっている」(大西会長)

 ちなみに、半導体商社の売り上げランキングは時代を反映して、少しく変化してきた。かつてNECが生産ランキング世界一であった頃は、その系列の代理店が首位を占め、そして上位に多くランク入りした。インテルが爆発的にCPUを伸ばしていた頃は、インテルを扱う商社の勢いはすごく、かなり上位にいた。しかして、2014年度のランキングを見れば1位マクニカ、2位UKCホールディングス、3位リョーサン、4位丸文、5位三信電気、6位トーメンデバイスとなっている。

 トップを行くマクニカは、北米を中心に車載や産機の半導体が好調に推移した。また、ネットワーク部門では官公庁や情報通信関連が伸びた。同社は創業当初から「技術商社」というスタイルを確立し、需要創造型企業を目指した。技術者比率は全従業員の30%にものぼるのだ。また、海外比率はいまや47%にまで高まっている。半導体分野ではPLD、ASSP、アナログ、ASICといった高度な技術サポート力を要するデバイス比率が71%を占めている。中国のデータセンター向けや台湾のタブレットPC向けが大きく伸びていることにも注目したい。今や、マクニカは日本をはじめとした中国・アジア地域、北米から南米、さらにヨーロッパなど世界56拠点でユーザーの設計開発から生産までをカバーできる。ここにきて、押し出されるようにしてトップにのし上がったマクニカの姿は、日本勢の行くべき方向性を指し示している。

「DAFSの日常的な事業活動は地味ではあるが、確実に成果を上げている。昨年は世界一のエアコンメーカーであるダイキン工業の草津工場で展示会を行った。非常にありがたいと評価された。会員の持つ半導体を一堂に展示することが受けたのだ。今年は昨年を上回る6社に対し、展示会開催を呼びかけている。ユーザー様とのつながりをDAFSが作っていく。この運動論は実に重要だ」(大西会長)
 商社のグローバル化はさらに拡大していくが、語学力もあり、企画力もあり、技術にも精通する人材はそう簡単に育つものではない。英語力が身についても、顧客のニーズを的確に把握し、何を欲しているかをキャッチできる人材は実のところ、それほど多くはない。また、何よりも「くれない族」とかつて言われた人たちは常に受身であり、自分から動くことはない。「私の仕事がうまくいかないのは、上司であるあなたがちゃんと指示しないからだ」と居直る人たちすら出てきた。こうした指示待ち世代の人たちも多く増えてきた。

 何事も控えめが一番、というのはある種、日本文化の特徴であろう。突出している人を嫌い、みんなで足を引っ張り、引きずり下ろそうとする。社内一の美人には嫉妬で狂う女たちの毒液がいつも降り注がれる。KYなどというくだらぬ言葉が大流行となり、その場の空気を読んで判断する人が偉いとさえ言われる。たとえ多くの人を敵に回しても、自分の意見をしっかりと貫く青年たちはジコチュー男として退けられる。熱情を持って仕事に取り組み、取引先の女性部長をしっかりマークすれば、ストーカーのエロ男として糾弾される。
 終戦直後に夜の街に立つ売春婦たちは「こんな女に誰がした」という歌詞の流行歌を口ずさんでいた。今では、神田の居酒屋の片隅で一生懸命やっても評価されない若者が「こんな日本に誰がした」と口ずさみ、一人酒をあおっているのだろう。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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