新潟市の篠田昭市長は、東京ビッグサイトで先ごろ開催されたファベックス2015の会場内で、特別講演「国家戦略特区 新潟の新たな挑戦」を行った。「ニューフードバレー構想と食品の高付加価値化」をテーマに、特区における新潟市のこれまでの取り組みや目指す方向性について紹介した。
新潟市は全国トップクラスの大農業都市で、耕地面積およびコメ産出額は市町村別で全国1位となっている。また、食品製造力もトップクラスで、亀田製菓や三幸製菓など多くの食品メーカーが立地している。
新潟市では農業と食品関連産業が一体となって成長すること目指す「新潟ニューフードバレー構想」を掲げ、6次産業化や食品の高付加価値化の取り組みを進めてきており、この構想を背景に「ニューフードバレー特区」を国に提案し、14年5月1日付で「大規模農業の改革拠点」として国家戦略特区に指定されている。
フードバレー構想の推進にあたって、13年6月に農業活性化研究センターを開設し、6次産業化や農商工連携を積極的に支援している。また、14年6月には日本初の公立教育ファームであるアグリパークを併設し、その中に農業加工支援センターを開設している。
特区では、大規模農業改革を支援している。農業用施設に新たに農家レストランが追加され、4事業者が選定されている。このうち㈲フジタファームの農家レストランが最初に開設する見込み。また、3月には(株)ローソンと新潟市内農業生産者が連携し、特例農業法人「ローソンファーム新潟」を設立している。さらに2社が計2万m²のオランダ型植物工場を計画している。
規制緩和の活用ではないが、特区効果として(株)IHIと新潟市内のベンチャー企業であるウォーターセル(株)が市内農業者と連携し、人工衛星による画像分析技術を用いた営農支援ツールの実証実験に取り組んでいる。また、パナソニックは植物工場でレタスの栽培実証に取り組んでおり、東京大学発のベンチャー企業のゲノメディア(株)と(株)電通は、ゲノム解析技術とマーケティングの融合による農作物の高付加価値化に取り組む。さらに、(株)ぐるなびと新潟市が食文化を通した地域活性化に向けた包括連携協定を締結している。
また、コメの輸出にも注力する。新潟クボタが、アジア圏に玄米を輸出して、現地に建設した精米工場で精米して出荷するビジネスモデルを構築しており、全農もこの方式を採用する計画。篠田市長は「早期に1万tオーダーまで持っていきたい。将来的には3万~5万tの輸出は可能ではないかと考えており、これに備えた体制を整備する必要がある。コメの輸出は日本のコメ農業の将来に有効ではないか」と語った。