電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第119回

(株)iPSポータル 代表取締役社長 村山昇作氏


iPS技術を日本の一大産業へ
事業化支援などを展開

2015/5/1

(株)iPSポータル 代表取締役社長 村山昇作氏
 (株)iPSポータル(京都市上京区河原町通今出川下る梶井町448-5、Tel.075-256-8567)は、大学・研究機関と事業会社の間に位置する「ポータル・カンパニー」を標榜し、iPS細胞に関連する様々な取り組みを進めている。その事業内容などを代表取締役社長の村山昇作氏に伺った。

―― 貴社設立の経緯を。
 村山 京都大学の山中伸弥教授のiPS細胞に関する特許を活用し、iPS技術を普及させることを目的にした会社として、iPSアカデミアジャパン(株)(京都市上京区)が2008年6月に設立された。そのなかで特許のライセンスを中心に様々な事業を行ってきたのだが、特許関連事業を一般的な事業リスクから隔離する目的で事業内容を再編し、特許関係以外の事業を担当する企業として14年7月に設立したのが当社iPSポータルである。

―― 事業内容について。
 村山 当社は、大学・研究機関と企業の間にあるポータル(玄関口)企業を標榜しており、大学・研究機関との共同研究を中心に、iPS技術に関する様々な事業化支援を行っている。特徴として、開発した技術は当社で実用化まで携わらず、パートナー企業にライセンス供与することが挙げられる。それにより、多くの研究者を支援し幅広い案件に携わることができるとともに、国内企業にビジネスチャンスを創出することもできる。
 そのほか大学や製薬会社に代わり、iPS細胞の維持・培養作業を受託するサービス、分化誘導細胞の販売、iPS関連機器の共同開発や販売、バイオ研究者がいない企業の代わりに開発品の評価作業を行う事業なども展開している。

―― 設備面について。
 村山 本社内にウエット型のショールームを設置しており、iPS技術関連の装置を実際に体験でき、細胞のデータを取ることもできる。現在約20種類の製品が展示されているが、近々に40種類以上まで増える見通しだ。14年は約1400人が訪れ、関連装置を一度にすべて見ることができるため、研究者には非常に喜ばれている。
 また、企業にとっても自社の製品の宣伝になるほか、これから参入する企業にとってはiPSに必要な技術を知ることができ、新たなアイデアを喚起する場となっている。
 6月からは千葉県柏市にもショールームを開設する予定であり、より多くの方にiPS技術を知っていただきたい。

―― iPSに興味はあるが、参入手段が分からないという声も多いです。
 村山 当社にもそういった話を多くいただく。そこで当社ではiPSビジネス協議会の運営も行っている。これは年6回開催している情報交換会で、iPSに関する基礎的なことから最新情報まで幅広く提供し、様々なニーズを知ることができる。会員企業数は142社(15年3月時点)を数え、医療・バイオ関連企業だけでなく、半導体製造装置をはじめ電子部品メーカー、電装メーカー、関連装置メーカーなども多く参加していただいている。

―― エレキ・メカトロ企業も参入できる分野があるということですね。
 村山 現在、iPS技術をさらに向上させていくために、検査機器、培養機器、分析機器といった周辺機器の充実が必要不可欠となっており、エレクトロニクス・メカトロニクス企業が技術応用できる分野が多くある。
 例えば、当社がサポートしたアルファメッドサイエンティフィック(株)(大阪府茨木市)は、オーディオアンプの技術を応用し、iPS心筋細胞の拍動や神経細胞の電位を測定できるシステムを開発した。こういった機器が増えることでiPS細胞の高性能化も図ることができる。

―― 今後の方針・抱負を。
 村山 3月までに計15の企業・団体から15億3000万円の資金を得た。このなかには京都府も含まれている。この資金をもとに大学との共同研究やiPS研究者の研究環境の向上に努めていく。また、受託サービスなどの支援事業をより強化し、大量培養技術の確立やコストダウンなど本格普及に向けた取り組みなども加速していく。
 日本はデフレの時代が長く続いたため国内企業は投資に消極的になっており、新たな産業の創出が求められている。そのなかで日本発の技術であるiPS技術は一大産業となる可能性があり、当社は大学・研究機関と企業を結ぶポータル企業として、今後もiPS関連事業の芽を1つでも多く育てていきたいと思う。

(聞き手・本紙編集部)
(本紙2015年4月30日号1面 掲載)

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