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第116回

テスラモーターズ バッテリー技術ディレクター カート・ケルティー氏


大規模電池工場を16年稼働
米IT企業の参入を歓迎

2015/4/10

テスラモーターズ バッテリー技術ディレクター カート・ケルティー氏
 テスラモーターズ(米カリフォルニア州、日本法人=東京都港区南青山2-23-8、Tel.03-6890-7700)は、革新的な電気自動車(EV)メーカーとして現在、自動車市場で最も注目を集める企業だ。EVに搭載する電池についても、世界最大のリチウムイオン電池(LiB)工場「ギガファクトリー」の建設を進めるなど積極的な取り組みを進めている。バッテリー技術ディレクターであるカート・ケルティー氏に電池分野の取り組みについて伺った。

―― ギガファクトリーの建設状況を教えて下さい。
 ケルティー 2014年夏ごろから米ネバダ州リノ近郊で建設に着手し、現在順調に進んでいる。ギガファクトリーのLiBは、現状のLiBに比べ、最終的には30%以上のコスト低減を目指している。高い目標設定であるが、原材料コストの低減、効率的な生産プロセスの構築、量産効果といった要素を複合することで達成できると考えており、EVの価格を低減するための大きな役割を担う。このコストメリットを早期に活かすため、16年から稼働できるように建設スピードを加速させている。

―― ギガファクトリーの生産能力について。
 ケルティー 最終的にはLiBの生産能力を年産35GWh(電池パックで50GWhに相当)まで引き上げる計画だが、16年の稼働初期段階の生産能力については現在検討中だ。稼働後もやみくもに投資をするのではなく、市場の状況をきっちり判断しながら、必要な生産能力を段階的に高めていく。ただ、その判断は年単位で行うようなものではなく、数カ月単位で決断を下していく。それくらいのスピード感を持ちながら、生産能力の拡大には対応していく。

―― ギガファクトリーで生産するLiBの用途は。
 ケルティー 17年に投入を予定しているコストダウン型EV「モデル3」には間違いなく搭載する。そのほかモデル3以外の車種にも搭載していく可能性はあるが、その辺りの判断は需要を見ながら、パートナーであるパナソニックのLiBも上手く活用し、最適な供給体制を構築していく。

―― 開発面での取り組みについて。
 ケルティー 当社の知名度が向上したことで、バッテリーに関する新しい技術が世界中から持ち込まれるようになった。詳細は言えないが、現在、性能向上につながる様々な取り組みが当社のなかで進んでいる。
 そのうち重要視している改良点の1つがエネルギー密度の向上であり、サイクル特性に課題があるものの、シリコン負極材などに注目している。

―― 貴社の主要市場である米国について。
 ケルティー 米国のEV市場は想定以上に広がっている。それは環境意識の高まりもあるが、それ以上に当社の車自体に魅力を感じ、性能が優れているから購入するといった方が増えている。つまり、環境負荷の低さという利点以外にも様々な面が評価され、一般的なガソリン車と比べて何の遜色もなく、価格に見合った車だという認識が得られている。

―― 米国ではグーグルやアップルなども自動車の開発を進めています。
 ケルティー 非常に喜ばしいことだ。我々のミッションは、車をはじめとした世の中のあらゆる輸送用機器を電動化していくことであり、このような新規参入が増えることは市場を活性化するとともに、そのミッションを達成していくことにもつながる。

―― 電池を他社に供給するお考えは。
 ケルティー 現状ではギガファクトリーの電池はすべて自社で使用する考えだ。それは他の自動車メーカーには販売しないという意味ではなく、ギガファクトリーでは自社に必要な分を適宜増産していく方針なので、他社に供給する余裕が生まれないと考えている。

―― EVは走行距離が短いと言われていますが。
 ケルティー 当社のEVは1回の充電で約500km走行できるが、電池の改良を進め、この走行距離を伸ばしたいという気持ちはある。しかし、EV市場を拡大していくためには、走行距離の部分よりも、コスト低減の方が重要であると考えている。例えば、走行距離が1000kmになるが販売価格も2倍になるというEVよりも、走行距離が500kmで価格が半分になるような取り組みを当社としては強化していきたい。

(聞き手・本紙編集部)
(本紙2015年4月9日号1面 掲載)

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