商業施設新聞
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No.1027

常態化した物価上昇


山田高裕

2025/10/14

 夏ごろに話題となっていたのが、コメ価格の高騰と備蓄米の放出だ。一部では5kg 5000円台に達したとも言われ、政治問題にもなった結果、政府が備蓄米を放出し、コメ価格の引き下げを狙った。様々な点でニュースにもなり、備蓄米の食味がどうというような話にもなったが、肝心のコメ価格についてはある程度引き下げ効果があり、政治的にもコメ価格の高騰は鎮火したと見られていた。

店頭に並ぶ新米
店頭に並ぶ新米
 こうして中秋を迎え、今年収穫された新米が市場に出回るようになった。その価格は産地やブランドによって様々だが、おおむね5kg 4000円台で推移しているようだ。農水省が発表した9月22日週のコメ価格も、平均して5kg 3539円、銘柄米で同 4432円という水準になっている。

 新米の銘柄米が5kg 4000円台というのは、例年と比べるとやはり高めという印象を受ける。しかし以前コメ価格の急騰が社会的に問題となり、政治的な解決にまで発展したときと比べると、社会的な注目度合いは低いようだ。ライフコーポレーションの岩崎社長も、新米については夏のコメ高騰時のような反応はないという旨のことを述べており、以前のようなインパクトはないと受け取っている小売事業者もいるようだ。

 こうしてみると、コメに限らず、価格高騰のインパクトというのは当初こそ大きく受け止められるが、それがある程度の期間続くと、むしろ当たり前のものとして受け取られ、新たに常態化していくものだと思わされる。実際食品スーパー各社の業績を見ても、商品の価格が高騰しても客数はあまり減っておらず、日常的な消費の場では価格高騰があっても消費行動に変化は見られていないようだ。

 10月4日に行われた自民党総裁選においても、物価高に対する政策というのは争点の一つとなったが、物価高が問題となるのはやはり賃金上昇が物価上昇に追い付いていないという現状があるからだ。物価高対策の軸を給付に置くのか、現在に置くのか、賃上げに置くのかという点はいろいろと議論されており、次期首相がどのような政策をとるかは期待が集まっているところではあるが、小売りなどでの消費行動の活性化にもつながる物価高対策を望みたいところだ。
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