(株)ミスミグループ本社(東京都千代田区)の機械部品調達AIプラットフォーム「meviy」(メビー)に関する事業が好調だ。meviyは機械部品のデータをアップロードするだけでAIが自動で即時見積もり、独自のデジタル製造システムにより最短1日で出荷するサービスで、機械部品調達時に発生していた作業時間の9割以上を削減でき、部品調達における非効率を解消するDXプラットフォームとして、国内トップのシェアを誇る。今回、meviyの事業を統括する常務執行役員 ID企業体社長の吉田光伸氏に話を伺った。
―― meviy事業の受注・販売状況から伺います。
吉田 堅調な成長が続いており、2024年度も大きな伸びを実現した。デンソー様、ジェイテクト様、豊田自動織機様などでの活用事例も公開でき、試作品向けの小ロットでの利用から、量産向けの中ロットでの活用も増えている。また、近年強化してきた海外(欧州、北米、中国、韓国)でのユーザー数も着実に増加している。
―― 事業が拡大している背景について。
吉田 対応できる範囲を年々拡大していることが挙げられる。例えば、サイズは切削加工(角物)で最大1000mm、切削加工(丸物)で最長5000mm、板金部品で最大1500mmに対応できる。また、溶接加工においてスポット溶接への対応を開始したほか、切削加工(角物)において、複雑で滑らかな曲面や底Rなどを含む自由曲面形状の部品にも対応できるようになり、3月からは切削加工(角物)においてウレタン素材への対応も開始した。そのほか、ボリュームディスカウントや、長納期(20日目以降の出荷)の選択で品質が変わらず30%割引で提供する「納期割引サービス」も好評いただいている。さらに、従来は板金や切削角物など一部に限られていた最短1日目出荷の超短納期サービスを切削丸物でも対応できるようにした。
―― エレクトロニクス向けで引き合いが増えているものはありますか。
吉田 3月から板金部品で「クリーン洗浄」への対応を開始した。当社ブランドの標準品(ねじ、ナットなど)にて、洗浄を行った状態で納品をする「クリーン洗浄品」のサービスがあり、これをmeviyでも対応できるようにした。最短5日目で出荷でき、お客様における洗浄部品の調達における手間を削減するとともに、リードタイムを大幅に短縮でき、これにより半導体や光学機器関連といった部品洗浄が求められる分野への対応力を高めた。
―― 新たな取り組みなどはありますか。
「meviy マーケットプレイス」でより幅広いニーズに対応可能に
吉田 3Dプリント、射出成形、注型、架台、製缶などこれまで提供していなかった加工方法へのニーズが拡大していることを受け、「meviy マーケットプレイス」を開始した。meviy マーケットプレイスでは、アップロードした設計データや入力した製品要件からAIが要件にマッチした製造パートナーを抽出し、見積もり回答時間、見積もり実績数などでの並び替え機能により、様々な角度で製造パートナーを探索し直接購買できる。meviyで対応できないものでもmeviyマーケットプレイスによって調達ができるため、結果、当社のサービスを活用していただける領域が拡大し、ユーザー数も急速に伸びている。
―― そのほかに始められたことは。
吉田 meviyを展開するなかで、過去図面の検索・共有に関する効率化を求める声が多かったことを受け、機械部品の図面データ検索AI「meviy ファインダー」も開発し、無償で提供している。meviyで培ったAI図面解析技術などを応用し、図面に記載されている寸法・記号・テキストなどの情報を、高度な図面認識AIが自動的に解析・蓄積することで、手入力による図面情報のデータ登録作業が不要となるサービスで、蓄積された情報をキーワードで簡単に検索することで、過去の図面を探す手間を大幅に削減できる。加えて、AIが図面データの類似性を判断し、蓄積されたデータから類似図面を迅速に検索する機能も搭載しており、meviy マーケットプレイスと同様にmeviy ファインダーも多くの引き合いをいただいている。
―― 今後の方針をお聞かせ下さい。
吉田 当社は、インダストリアル・オートメーション(IA)産業のお客様に対して、紙カタログ、ECサイト、meviyなどを通じて機械部品の調達に関するムダを低減する「時間価値」を提供してきた。そして日本をはじめ先進国では少子高齢化が進み、CASE、ロボティクス、AI、航空・宇宙といった技術変革や産業の拡大なども相まって、IA産業は今後さらに拡大することが見込まれており、そうした拡大にあわせてmeviyの事業をさらに拡大していきたい。
一方、IA産業を支えるサプライチェーンをみると人手不足倒産や廃業などが増加し、機械部品の調達に関して課題を抱えておられる方も増えている。そうした点からみてもmeviyのような機械部品調達AIプラットフォームならびにmeviy マーケットプレイスやmeviy ファインダーなどの重要性がさらに高まっていくとみており、meviyファミリーが生み出す「時間価値」によってIA産業をさらに支援し、サプライチェーンの強靭化にも貢献していきたいと思う。
(聞き手・副編集長 浮島哲志)
本紙2025年4月24日号8面 掲載