電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第622回

(株)荏原製作所 執行役 精密・電子カンパニー カンパニープレジデント 南部勇雄氏


「装置と機器」の独自モデル追求
めっきなど先端実装分野も拡大

2025/4/18

(株)荏原製作所 執行役 精密・電子カンパニー カンパニープレジデント 南部勇雄氏
 (株)荏原製作所は精密・電子カンパニーで、CMP装置のほかドライ真空ポンプや排ガス処理装置などを手がける。半導体製造装置とコンポーネント機器(サブシステム)双方を手がけるユニークな事業スタイルを強みに、独自のポジショニングを築いている。2025年1月1日付で、カンパニープレジデントに就任した南部勇雄氏に今後の事業の方向性などを聞いた。

―― まずは、ご略歴から。
 南部 1997年に入社し、CMP装置の営業職としてキャリアをスタートした。2000年から9年間、米国駐在を経験し、そこでマーケティングの重要性を痛感し、帰任後にマーケティング組織の設立を申し出て、以降19年まで、当カンパニーのマーケティング担当として職務に当たってきた。

―― マーケティング組織設立のきっかけは。
 南部 営業ベースで顧客から得られる情報は直近のものであり、2~3世代先を見据えて「こういう機能・装置が必要」という情報、いわゆるプロダクトマーケティングを社内で強化する必要があった。当時から顧客と開発ロードマップを共有していたが、営業とは違うアングルで情報を得ていくかたちがどうしても必要だった。

―― わかりました。精密・電子の事業戦略について。
 南部 30年度に向けた長期ビジョン「E-Vision2030」のなかでは従来の単品販売から発展して、ソリューション志向を強めていくことに重点を置いている。CMP装置はもとより、ドライポンプや排ガス処理装置などのコンポーネントでは、オーバーホールの拠点整備を含めたサポート体制を拡充しており、さらなるシェアアップを図っていきたい。

―― コンポーネントの成長性について。
 南部 昨今の半導体ファブはプロセスの高度化に伴って、メーンファブよりも直下のサブファブが非常に混み合っており、フットプリント縮小などのニーズが非常に強い。ドライポンプは現在、業界2番手である一方、排ガス処理装置はシェア上昇の余地が残されており、差別化した製品を通じて事業拡大を図る。

―― 具体的には。
 南部 排ガス処理装置で筐体の高さを従来比で半分に抑えた新モデルを投入している。これにより、排ガス処理装置の上部にドライポンプなどを設置でき、フットプリントの縮小が可能だ。さらに排ガス処理装置とドライポンプをつなぐ配管も短くできるため、省エネのメリットもある。

―― 25年の半導体装置市場について。
 南部 ロジックは地域、顧客により投資意欲に濃淡が表れており、メモリーはHBMの投資があるものの限定的と見ている。中国投資は当初想定したほどの減少幅にならないのではないかと考えている。

―― 25年の事業見通しは。
 南部 精密・電子事業として、売上高は前年比8%増の3000億円を見込んでいる。CMP装置を中心に顧客ミックスが奏功しているほか、その他セグメントに含まれるめっき装置やベベル研磨装置の伸びも増収に貢献する見通しだ。めっき装置は、生成AI向けの先端パッケージで採用を獲得して需要が拡大しており、ベベル研磨装置はウエハー貼り合わせ工程で引き合いが伸びている。

―― 生産体制は。
 南部 熊本事業所で生産ラインの拡張を進めており、新生産棟となるK3棟が竣工した。25年4~6月期中の稼働開始を予定している。また、藤沢に新開発棟となるV8棟の竣工を控えている。

―― 最後に今後の方向性について。
 南部 業界を見渡しても、装置とサブシステム双方を手がけている会社はあまりなく、この強みをしっかりと生かしていきたい。当社グループの別カンパニーでは、建物全体の冷熱を制御する冷凍機や給水を制御するポンプを有しており、顧客のファブ全体に対しての価値創造に貢献するポテンシャルがある。このようなユニークなポートフォリオを生かして、ファブ全体のCO2削減に貢献できるような提案も進めていきたい。装置業界ではM&Aなどを通じて他のプロセス装置を傘下に収める「横方向の拡大」がメジャーだが、我々はファブ全体を切り口に、装置、サブシステム、ファシリティーをトータルでみる「縦方向の拡大」を意識していきたい。


(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2025年4月17日号1面 掲載

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