電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第621回

東京エレクトロン九州(株) 代表取締役社長 林伸一氏


生産拠点に新たな研究開発棟
パッケージなど後工程に注力

2025/4/11

東京エレクトロン九州(株) 代表取締役社長 林伸一氏
 東京エレクトロン(株)は、国内トップの半導体製造装置メーカーとして、一大飛躍のときを迎えている。これまで同社が世界各地に出荷した装置は業界最大の9万6000台となり、年間約4000~6000台の新規装置を世に送り出している。EUV露光装置にインラインで接続する塗布現像装置は実にシェア100%を保有し、ガスケミカルエッチング、拡散炉、バッチ成膜などは世界1位のシェアを誇っている。今回は、同社にあって常務執行役員の任にあり、東京エレクトロン九州(株)(熊本県合志市)の代表取締役社長である林伸一氏に話を伺った。

―― 東京エレクトロン全体の2025年3月期の売り上げについて。
 林 2兆4000億円の売り上げを達成見込みであり、前期の1兆8305億円を大きく上回る伸びとなっている。営業利益も前期比49%増の6800億円が見込まれており、高い数字になっている。市場をリードする圧倒的な技術総合力がお客様に支持されており、実にありがたいことだと思っている。

―― 東京エレクトロン九州について。
 林 91年4月の設立で、約34年の歴史を積み重ねてきた。資本金は20億円、社員は2000人を超える(24年4月1日現在)。本社は熊本県合志市にあり、大津事業所の2カ所で稼働している。熊本の地から世界を見据え、研究開発とものづくりに常にチャレンジし続けることをモットーにしている。「人」「技術」「社会」とのつながりを大切にしていく姿勢を貫いている。

―― さて、林社長は熊本のご出身ですね。
 林 熊本市内で生まれ、日本一のクラス数を持つと言われた帯山中学校、熊本商科大学附属高校(現・熊本学園大学附属高校)を経て、熊本大学で学んだ。卒論は磁気軸受に関するものであり、96年に東京エレクトロン九州に入社し、開発畑を歩んできた。

―― 新たな研究開発棟を立ち上げていますね。
 林 熊本の中に研究開発棟を新たに持つことの意味は大きい。生産現場から出てきた課題を直ちに開発に取り込めるからだ。この新棟は25年夏の竣工を予定しており、開発、評価、デモのトータルソリューションを一気に上げていきたいと思っている。

―― 新たな開発テーマについては。
 林 塗布現像、洗浄、エッチング、成膜など当社の保有する装置群との連携をさらに深化させた開発に取り組みたい。ウエハーボンディングなどはすでに取り組んでいるが、後工程由来の技術の重要性が改めて注目される現在にあって、アドバンスドパッケージやチップレットなどの研究開発も加速していきたい。

―― 熊本が担っている役割については。
 林 塗布現像装置については、圧倒的な世界シェアを保有しているが、とにかくお客様のカスタマイズの要求に合わせ込むことが大切であり、一方で必要な生産台数の確保、そして納期の短縮などを心がけていかなければならない。洗浄装置も九州としては重要な分野であり、研究開発から設計・製造・据え付けまでを行っている。洗浄装置はウエハー表面の付着異物を除去する各プロセス工程間での処理や、均一で高選択なエッチングやパターン倒壊を起こさない乾燥技術を搭載する枚葉、バッチ装置のラインアップで幅広いプロセスアプリケーションに対応している。

―― 部下に対して示唆していることは。
 林 当社は自由闊達の社風で知られているが、「常に目標を高く持て!」と呼びかけている。改善・改良だけをやっていてもダメで、失敗の積み重ねがあって、初めて新たな技術が生まれてくる。悩んだら上司に相談し、自分のなかに技術を蓄積していくことが大切だ。今後はパッケージングの分野にも付加価値の高い技術ソリューションを展開していくことが重要であり、未知の分野を開拓するのは、いつの時代にあっても限りなくトライしていくスピリッツだ。


(聞き手・特別編集委員 泉谷 渉)
本紙2025年4月10日号1面 掲載

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