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第598回

24年の世界新車販売台数は微増


日系自動車メーカーはまだら模様

2025/4/11

 2024年の世界新車販売台数は、前年比2%増の8900万台となったもよう。中国は政府による補助金に加えて、新エネルギー車(NEV)への旺盛な需要が牽引役となり好調に推移。また、米国も販売台数が1600万台となり、コロナ禍以降で最高を記録した。

 一方、24年におけるプラグイン車(BEV+PHEV)の販売台数は、同21%増の1720万台と2桁の高成長を記録。プラグイン車の販売ランキングを見ると、トップがBYD、2位がテスラという順位は揺るがなかったものの、3位には前年4位のGeelyがランクインし、中国勢の存在感がますます高まっている。

日系OEM各社の動向

■トヨタ自動車
 24年4~12月期における連結販売台数は、前年同期比4%減の700万台となった。アジアならびにその他(中南米、オセアニア、アフリカなど)で微増となったものの、日本、北米、欧州の主要市場で軒並みマイナス成長としている。また、トヨタ・レクサスの販売台数は同2%減の775.8万台で、このうちハイブリッド車(HEV)が同24%増の328.9万台、プラグインハイブリッド車(PHEV)が同13%増の11.5万台、バッテリー電動車(BEV)が同27%増の11万台、燃料電池自動車(FCEV)が同65%減の1000台で、電動車比率は前年同期から9.4ポイント増の45.3%にまで拡大している。

 一方、先ごろ同社は、欧州においてBEVのラインアップを拡充していく方針を明らかにした。欧州では、他地域に比べ電動車保有率が高く、BEVの保有率も高いレベルにあることから、さらなるBEVの商品力強化が必要となる。

 同社は、マルチパスウェイの取り組みを一層加速すべく、欧州で24年末に発表したアーバンクルーザーと合わせ、欧州市場で主要となる小型から中型サイズのSUVをカバーできるラインアップとして、今回3つの新型車を発表した。

欧州仕様の「C-HR+」
欧州仕様の「C-HR+」
 そのうちの1つ「C-HR+」は、e-TNGAプラットフォームを採用し、専用に調整されたサスペンションによって満足感のあるドライブ体験を提供する。電池セルに改良を加えた2つのリチウムイオン電池を設定。ベースとなるバッテリー容量57.7kWh仕様は航続距離455kmを、より航続距離を延ばしたバッテリー容量77.0kWh仕様は航続距離600kmを確保。合わせて前輪駆動タイプ、全輪駆動タイプを設定することで幅広い選択肢を提供する。25年後半から欧州で発売を予定している。

■日産自動車
 日産自動車は、24年度第3四半期決算において、24年度通期業績予想を24年11月の従来計画から、売上高を2000億円減の12兆5000億円へ、営業利益は300億円減の1200億円へと下方修正。また、未定だった純損益は800億円の損失(前年度は4266億円の利益)とした。なお、24年度の販売台数予想340万台、グローバル生産台数予想320万台は24年11月の従来予想を据え置いた。24年4~12月の小売販売台数が前年同期比2%減の240万台と微減。ただし、北米は新車販売が堅調で同2%増と伸長した。

日産・ホンダの経営統合は破談に(写真は24年12月のMOU発表時に撮影)
日産・ホンダの経営統合は破談に(写真は24年12月のMOU発表時に撮影)
 このような状況のなか、同社では検討を進めていたホンダとの経営統合について、25年2月13日に急転直下で白紙撤回を明らかにした。当初、持株会社(HD会社)を設立し、両社がその傘下に入り、各社の強み・特徴を維持しながら、競争力を高めていく方向で話し合いが進められていたが、ホンダ側が「HD会社を作ることに労力を割いている場合ではない」と判断し、日産の子会社化へ軌道修正を図った。しかし、HD会社体制での経営統合で合意していた日産は、「自主性はどこまで守られるのか、日産のポテンシャルを最大限引き出せるのか」と、MOUの枠組みと異なる完全子会社化の提案を拒否し、今回の経営統合案は白紙撤回となった。

■ホンダ
 24年度第3四半期(4~12月)におけるグループ販売台数は、前年同期比10%減の281.7万台と苦戦。日本、北米、その他地域ではプラス成長としたものの、欧州が前年同期から3000台減、アジアでは中国を中心に大幅に減少して同40.3万台減(うち中国で34.9万台減)となった。また、電動車のグローバル販売台数は、HEVが同1%増の65.2万台、PHEVが同22%減の1.4万台、BEVが同4.1倍の5.8万台だった。

 25年度以降のBEV戦略については「来期にかけてのBEV戦略は非常に悩ましいところ。特に米国では、今の政権がどういった政策を打ち出してくるか、その見通しがつかない。ただ、GMから供給している機種・モデルについては、25年度は基本絞ったかたちで展開していく予定。一方、CES2025などで発表している0シリーズをはじめ、それをベースにしたAcuraの新モデルを25年度後半に投入予定で、現在、それらのモデル向けにLGESとの合弁会社であるバッテリー工場も、25年末に稼働開始を予定している」と語った。

 一方、足元の事業環境を踏まえ、24年度通期の販売見通しは、前回見通しから5万台減の375万台へ下方修正。北米、アジア、その他は前回見通しを据え置いたが、日本を前回見通しから4万台減の64万台、欧州を同1万台減の9.5万台と見込む。

■スズキ
 スズキは、25年2月に30年度を最終年度とする新中期経営計画を発表した。経営目標は売上高8兆円、営業利益8000億円、ROE13%。また、設備投資・研究開発費は合わせて4兆円を見込む。

 四輪事業では、30年度に販売台数420万台(23年度実績316万台)、営業利益7000億円(同3982億円)の達成を掲げた。「各国の規制に対応すべく、適切なBEVモデルを投入。それぞれの国・地域のエネルギー事情に応じて、顧客が自身に合った商品を選べるよう、FFV(フレックス燃料車)・CBG車(圧縮バイオメタンガス車)・エタノール混合燃料対応車などの商品も投入していく」と鈴木社長は語った。

 最重要市場のインドにおいては、30年度に販売台数254万台を計画。シェア50%、BEVの生産・販売・輸出1位を目指す。

 一方、24年4~12月の販売台数は、主に日本、パキスタン、中近東における販売が増加し、前年同期比4%増の236.3万台となった。インドにおける販売台数は、同0.2%減の130.1万台にとどまったのの、24年12月単月の末端販売は25.3万台となり過去最高を記録。政府による最低支持価格や良好なモンスーンなどの影響により、農村部での需要も喚起されたことが要因として挙げられる。
 なお、24年度通期の販売台数はASEANで下方修正したものの欧州を上方修正したことで、世界販売合計は前回並みの324.4万台としている。

■マツダ
 24年4~12月期の業績についてはプラス面とマイナス面の両方があった。同社では期初に、「今期はトップラインの成長を目指す年」としていたが、実際に9カ月累計の売上高は過去最高を達成し、台数は前年比で増加した。米国では主要ブランドの中で、直近5年間で、最も成長が著しいブランドの1つとなった。しかしながら、収益面では低迷を余儀なくされた。販売奨励金については、引き続き業界内での優位性の維持を図っているが、奨励金の増加が台数、為替の増益効果をオフセットした。

 なお、24年4~12月期の生産・販売実績は、生産台数が前年同期比2%減の90.9万台でアラバマ工場やメキシコでの生産が前年から増加したものの、国内生産や中国での生産が減少した。グローバル販売は、同4%増の96.6万台。収益性の高い北米市場では、CX-50やラージ商品のCX-90/70の貢献により販売が大きく伸び、トップラインの成長を牽引した。一方で、アジア地域での販売は減少した。特に中国では、NEVの需要増加や、内燃機関搭載車の価格競争の激化により販売が減少した。

 24年度通期の販売台数見通しは、中国市場での販売状況を反映し、前回から2万台減の133万台へ下方修正している。

■三菱自動車工業
 24年4~12月期の世界販売台数は、前年同期比7%増の62.4万台となった。中国他で大きく減少したものの、日本、北米、ASEAN地域、豪州・ニュージーランド、中南米・中東・アフリカ他、欧州の主要地域ではいずれもプラス成長となり、堅調に推移した。

 日本では市場全体が前年割れとなったが、同社では新型アウトランダーPHEVや、デリカD:5特別仕様車の投入が奏功し、販売台数の伸長・販売シェアの拡大を達成した。北米では総需要は若干増にとどまったが、カナダでアウトランダーPHEVが2年連続でPHEVカテゴリーで販売台数1位を獲得した。一方で、米国を中心に販売競争が激化しており、利益と台数のバランスについて難しいかじ取りが継続。今後も、市場動向を注視すると同時に柔軟な販売戦略を実施していくとしている。

 なお、24年度通期の販売台数は、前回見通しの89.5万台から4.7万台減の84.8万台へ下方修正した。地域別にみると、豪州・日本・北米では見通しを引き上げたが、欧州・中東・ASEAN地域では、全需伸び悩みまたは回復遅延の影響を織り込み、それぞれ見通しを引き下げている。

■SUBARU
 24年4~12月期における世界販売台数は、前年同期比4%減の70.7万台。国内市場では、フォレスターを中心に堅調に推移。また、24年12月からはクロストレック・ストロングハイブリッドの販売が本格的にスタートしたこともあり、前年並みを確保した。米国市場については、在庫水準と販売奨励金のバランスを鑑みた生産・出荷に取り組んだことにより、同3%減の50.6万台のマイナス成長を余儀なくされた。なお、米国での小売販売については24年暦年で前年比6%増の66.8万台と堅調に推移しており、25年1月末時点で30カ月連続での前年超えを記録している。

 一方、24年度通期については計画通りに進捗していることから、前回計画から変更はなく、生産台数95万台、販売台数95万台を見込んでいる。

 なお、SUBARUでは、25年内にBEVの自社生産に向けて矢島工場の工事が本格化する。同工場2本の生産ラインのうち1本を約半年間止めて工事を行うため、一定数の生産打数の減少が想定される。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 清水 聡

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