電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第614回

(株)メイコー 代表取締役社長 名屋佑一郎氏


24年度業績は過去最高へ
ベトナムで大型投資敢行

2025/2/21

(株)メイコー 代表取締役社長 名屋佑一郎氏
 プリント基板メーカー大手の(株)メイコー(神奈川県綾瀬市)は、通信衛星関連などの新規事業の拡大が軌道に乗り、2024年度通期(25年3月期)業績も過去最高を更新する勢いだ。一方で、パッケージ基板事業の立ち上げに苦労するが、大底は打ったとの認識だ。ベトナムでも大型投資を継続、さらなる高みに挑む。同社の名屋佑一郎社長に、現在の景況感ならびに25年度事業見通しを聞いた。

―― 足元の市況について教えて下さい。
 名屋 国内の車載基板は24年前半から減速が目立っていた。日系自動車メーカーの低迷に加え、EVも中国や欧州市場での販売が一服してきており、24年度いっぱいは厳しい見通しだ。ただ、EVは中長期的には成長市場であり、ADAS含めて車の電子化は加速する。これ以上の落ち込みはないと思うが、25年度からの回復に期待している。一方、ビルドアップ(BU)基板やモジュール基板は好調だ。スマートフォン(スマホ)向けは安定している。現在、ASEAN地域への生産移管が加速しているため、ベトナムはほぼフル稼働に近い。

―― 24年度通期業績について上方修正しました。
 名屋 24年度の売上高を前年度比10%増の1970億円、営業利益を同63%増の190億円に改めた。当初計画に比べて売上高は20億円、営業利益は30億円引き上げた。いずれも過去最高を見込む。当初より車載基板が100億円弱下ぶれたが、好調の通信衛星などの新規事業やSSD/通信モジュール、高性能スマホ向けBU基板などの高付加価値基板で補う。

―― 設備投資も高水準で推移します。
 名屋 24年度は期初計画より100億円上乗せして300億円に引き上げている。25年度も300億円前後を投資する計画だ。順調に受注が拡大すれば、26年度も300億円ほど投資を行うことも検討している。高精細、高多層、高速化基板といった高付加価値基板に集中的に投資を行う。

―― ベトナムで大型工場の建設が相次ぎます。
 名屋 ハノイ市タックタット工業団地のベトナム工場内で第4工場を整備中だ。建屋は完成しており、現在製造設備を搬入している。25年半ばから量産を見込む。生産品目は高多層や高密度BU基板、SSDや通信モジュール基板などで、ベトナム工場内の第2工場と第3工場を補完する増強投資となる。
 さらには、ハノイ市近郊のホアビン地区にも新工場を建設中だ。延べ床面積は8万m²で、関連投資額は500億円を見込む。生産するのはスマホやAI関連向けの中高多層基板や、高密度BU基板を計画している。量産の開始時期は26年初頭を見込む。

―― 高多層板市場も本格的に開拓しますね。
 名屋 中長期的にも需要は拡大するとみている。現在、河北工場(山形)で車載基板を手がけているが、これを一部天童工場に移管して、空いたスペースを高多層基板の研究開発ラインと量産ラインに改造する。30層クラスでBU工法も取り入れる。

―― EMS事業も堅調に推移しています。
 名屋 まずは年間売上500億円を目指す。足元は堅調で新規案件も受託した。国内拠点のある米沢近隣に用地を確保し、新工場の建設を検討中だ。投資額は数十億円を予定している。

―― 25年度ならびに中国事業の見通しは。
 名屋 新規顧客含めた車載基板やパッケージ基板などの回復に期待する。通信衛星などのさらなる拡大も見込む。BU基板など付加価値の高い事業にも注力する。ベトナム第4工場の立ち上げ効果も寄与してくるため、過去最高業績の更新を狙いたい。
 今後、成長分野に3年間で約900億円の投資を行うが、中国での投資も継続し、同市場での需要拡大に対応する。車載分野では、広州工場と武漢工場でADAS用にBU基板の生産を行う。さらに武漢工場ではスマホやタブレット向けBU基板の量産を開始する。中国の生産拠点も合理化や生産性の向上に努めており、営業利益率は10%台を達成している。


(聞き手・特別編集委員 野村和広)
本紙2025年2月20日号1面 掲載

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