(株)島津製作所(京都市中京区)は、計測機器をメーンに医用機器、産業機器、航空機器などに多角展開する精密機器メーカーだ。1875(明治8)年に創業、2025年3月に150周年を迎える。同社の25年度の業績目標は連結売上高5500億円、営業利益800億円以上。また24年度における研究開発費は280億円、設備投資額は同じく280億円となっており、次の時代に向けての投資は常にアクティブな姿勢である。今回は同社の執行役員である田中雅彦氏に産業機器分野の状況を中心に話を伺った。
―― お生まれ、略歴について。
田中 愛媛県八幡浜で生まれ、育った。県立八幡浜高校を出て、京都大学工学部機械学科で学んだ。卒論は「核融合に使う金属材料の高温強度の特性」というテーマであった。島津製作所に入社を志望したのは“色んなことをやっていて面白い会社”という感想を持っていたからだ。後年、社員の田中耕一氏(現島津製作所エグゼクティブ・リサーチ フェロー)がノーベル化学賞を受賞したが、これはサプライズだった。
―― 入社してからの仕事は。
田中 産業機械事業部のエンジニアとして働いた。入社してすぐの印象は「島津の社風はやはり素晴らしい」だった。産業機器分野を中心にキャリアを積んだ。
―― 産業機器分野のカテゴリーは。
田中 24年3月期では全社売り上げの約13%を占める分野であり、地域別でいえば日本が41%、中国が30%、米国が13%、欧州が7%、その他アジアが9%となっている。ターボ分子ポンプが49%、油圧機器が24%、その他27%という構成比率になる。
―― 製品群の概要を。
田中 半導体やディスプレーの製造に使われるターボ分子ポンプ、自動車や半導体分野で用いられるセラミックの製造向けの真空加圧焼成炉が伸びている。そのほか、産業車両や運搬機械の油圧動力源である油圧歯車ポンプ、同じく動力系としての油圧コントロールバルブ、海洋開発のための水中光無線通信装置がラインアップされている。
―― 半導体製造装置(SPE)分野に注力していますね。
田中 ここは非常に期待のかかるところだ。とりわけ当社のターボ分子ポンプはマーケットシェアが高く、4大SPEメーカーの新製品への搭載比率も上昇している。常に顧客の課題解決につながる高付加価値製品の提供が重要だ。世界的な半導体ブームにより、製造装置分野の伸びはすさまじい。この波にしっかりと乗っていきたい。
―― 海外展開を加速しています。
田中 中国の半導体投資が強化されていくことに備えて、武漢に10拠点目のサービスセンターを開設した。これからも、世界の各エリアにサポートする体制をきっちりと構築していく。もちろん、海外の売上比率は上げていく計画であり、島津全体として60%以上に高まっていくだろう。ただ、日本国内においても、Rapidusが北海道千歳市で進める新工場建設などの動きにも即応していかなければならない。
―― 半導体製造工程に関わる貴社の評価・測定技術は。
田中 これはかなりの広範囲でお手伝いできることだ。ウエハー製造工程では、ウエハー表面の粗さ評価、バンドギャップ測定、研磨剤のシリカに含まれる粗大粒子の測定などがある。前工程では、レジスト膜の評価、N2中の微量水測定、半導体製造装置の排気性能改善、薄膜/多層膜の評価など多くの製品群がある。後工程においても、封止剤の評価、ICチップ断面の元素分析評価など様々な技術を持っている。
―― 今後、期待する製品は。
田中 半導体製造工程の約30%が超純水を使用した洗浄工程になっている。そして、超純水の原水は半導体工場が建設されている国や地域の地下水や河川水を利用しているため、原水に含まれている不純物は、半導体工場の立地場所によって異なっている。当社は、業界初のエキシマランプを搭載した超純水用オンラインTOC計「eTOCシリーズ」を開発した。従来難しかった不純物も検出できるようになり、市場の評価は高い。ターボ分子ポンプの販路も活用し、これを一気に拡販したい。
(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
本紙2025年2月6日号8面 掲載