レーザーテック（株）（横浜市港北区）は、光応用技術をコアに、半導体向け検査・計測装置（マスク検査、ブランクス検査、ウエハー検査など）やFPD用マスク検査装置、各種顕微鏡などを展開する、研究開発型のファブライト企業である。多くの製品でオンリーワン技術を強みに高いシェアを獲得している。また、同社の業績を見ると、2017年6月期から24年6月期まで、8期連続で過去最高を更新。25年6月期の通期業績もさらなる売上拡大を計画するとともに、先ごろ発表した新たな中期経営計画では、30年6月期に売上高4000億～5000億円、営業利益率35％以上を目指す方針を明らかにしている。
　24年7月から代表取締役 社長執行役員に就任した仙洞田哲也氏に、事業の概況、新たな中期経営計画の目的達成に向けた事業戦略などについて話を伺った。

―― まず、社長のご略歴からお聞かせ下さい。
　仙洞田　私が当社に入社したのは、主力製品の1つであるマスク検査装置「MATRICS」の700シリーズの開発がスタートした08年。開発当初から光学系・アプリケーションのエンジニアとして同シリーズの開発に携わることで、装置全体を俯瞰できる非常に良い経験となった。また、その後は営業部門も担当させていただいた。

―― 貴社では、多くのオンリーワン製品を生み出し、高いシェアの獲得・業績の拡大につなげてきましたが、それを可能とする背景は。
　仙洞田　当社はファブライト企業であり、エンジニアはお客様対応・技術開発に軸足を置いている。そのなかで、お客様が抱える様々な課題や細かなニーズをお聞きし、ソリューションを提供していることがオンリーワン製品の開発につながっている。
　また、当社のエンジニアは、特定の装置・事業分野に偏らずに広い視野で開発に取り組んでおり、当社が強みを持つ光応用技術が貢献できる新たな市場・事業領域の拡大にも積極的に取り組んでいる。

―― 7月に新社長に就任されましたが、改めて今後の抱負をお聞かせ下さい。
　仙洞田　現状に満足せず、事業成長を継続していく。当社は、ここ数年の急成長で人員も大きく増えており、改めてお客様のサポート体制や間接部門など、しっかりとした事業体制を構築していきたい。また、業績としては、先ごろ30年6月期を最終年度とする中期経営計画（売上高4000億～5000億円、営業利益率35％以上）を発表させていただいた。半導体市場は、30年には1兆ドル規模に達するとの見通しがあり、年平均成長率（CAGR）に換算すると8.6％だ。当社は、その市場成長率を上回るCAGR10％以上を目指し、目標達成に向けて取り組んでいく。

―― 大手露光装置メーカーが、25年売り上げを下方修正するなど、EUV投資がスローダウンしています。
　仙洞田　確かに、足元では先端分野での投資が弱含みで推移しているが、それはあくまでも1～2年という短期的な動きだ。中期的（30年6月期まで）に見ると、半導体市場は着実に成長していく見通しだ。半導体製造プロセスは2nmノードの量産開始を目前に控え、今後もさらに微細化が進展していくが、歩留まりの改善には検査装置が不可欠となる。
　当社では、19年にEUV光を光源に用いたアクティニックEUVパターンマスク欠陥検査装置「ACTIS A-150」を業界に先がけて市場投入した。さらに、23年には高NAのEUVリソグラフィーに対応する次世代機「ACTIS A-300シリーズ」を開発した。新設計の光学系や自社開発の高輝度EUVプラズマ光源「URASHIMA」を採用し、A-150と比較しても非常に高い欠陥検出性能を実現している。現在、これらACTISシリーズはマスクショップ向けがメーンとなっているが、微細化の進展に伴い、半導体ファブでの導入がさらに増えていくものと期待している。

―― 新研究開発拠点「Lasertec Innovation Park（InnoPa）」の状況は。
　仙洞田　InnoPaは、需要の増加に応じた生産能力増強を目的に整備を進めている新拠点で、すでに23年7月からFab-4aの稼働を開始した。現在は第2期工事を進めており、25年初頭に完了し、稼働を開始する予定だ。これ以外にも、製造管理の強化や部品調達の効率化、装置立ち上げ工程の改善などに取り組むことで、リードタイムを現在の1.5～2年から、0.5～1.5年に短縮することが可能となる。